第29話 赤い絆2

文字数 345文字

「ジュン、この人に、なぜ助けたのか話していないの?」
 黒煙の方角を涙眼で見ていた女が、大谷に顔を向けて口を挟んできた。
 すると、大谷が俯いたまま瞳を少し動かした後、俺と眼を合わせてきた。
「宮島さん、僕は、あなたの、曾孫です。母の名前は、恵美。そう宮島さんの孫娘です。それで、仲間の規律を破って、あなたを助けました」
 その衝撃の言葉を耳にして、俺の頭の中は一瞬、真っ白になった。
 思考が戻ると、家族のことが次々と蘇ってきた。
……そうだ! 娘の恵美は、大谷の母は? 家族は今、どうしているのか?
 と訊ねようと、したときだった。
「宮島さん! 逃げて!」
 大谷の叫ぶ声と同時に、胸を押されて突き飛ばされた。
 すると突然、側で何かが爆発でもしたのか、いきなり意識が、ふっ飛んだ。
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