第28話 赤い絆
文字数 500文字
俺たちは、山を越え、川を渡り、延々と歩き続けた。
時折、獲物を探すかのように上空に現れるロボットたちの眼を逃れながら、見晴らしのよい峠に辿り着いたときだった。
緑が繁る谷合から、原爆のキノコ雲のような黒煙がもくもくと何度も上がっていた。強い風に乗って、鼻を衝く煙の臭いもこちらまで伝わってくる。
「ひ、ひどい」
女がいまにも泣き出しそうな顔で、声を零した。大谷は青ざめた顔で見ていた。
「あそこには何があったのだ?」
がっくりと肩を落としたような様で、黒煙を上げ続ける先を見つめる大谷に訊ねた。
「火星に行ける、最後の宇宙船です。これで、火星には行けなくなった」
肩に続いて両膝も地に落としそうなありさまで答えると、ひどく悲しそうな眼をして、黒煙を上げ続ける谷間に、ずっと瞳を注いでいた。
「これからどうする?」
おかれた状況がよく飲め込めていない俺は、他人事のように訊いた。
「AIたちを破壊しようとした僕たちは、捕まると、ロボットに殺されます。ですが、あなたは別です。僕たちと離れて生き延びてください」
ひどく悲しそうな顔をしたまま、別れるときがきた、との口調で声を返してきた。
時折、獲物を探すかのように上空に現れるロボットたちの眼を逃れながら、見晴らしのよい峠に辿り着いたときだった。
緑が繁る谷合から、原爆のキノコ雲のような黒煙がもくもくと何度も上がっていた。強い風に乗って、鼻を衝く煙の臭いもこちらまで伝わってくる。
「ひ、ひどい」
女がいまにも泣き出しそうな顔で、声を零した。大谷は青ざめた顔で見ていた。
「あそこには何があったのだ?」
がっくりと肩を落としたような様で、黒煙を上げ続ける先を見つめる大谷に訊ねた。
「火星に行ける、最後の宇宙船です。これで、火星には行けなくなった」
肩に続いて両膝も地に落としそうなありさまで答えると、ひどく悲しそうな眼をして、黒煙を上げ続ける谷間に、ずっと瞳を注いでいた。
「これからどうする?」
おかれた状況がよく飲め込めていない俺は、他人事のように訊いた。
「AIたちを破壊しようとした僕たちは、捕まると、ロボットに殺されます。ですが、あなたは別です。僕たちと離れて生き延びてください」
ひどく悲しそうな顔をしたまま、別れるときがきた、との口調で声を返してきた。