第1話 再生

文字数 544文字

 人の面を被った、悪魔と変わらない指導者たちによって繰り返されてきた、戦争とテロ。
 そんな数々の悲劇を繰り返しながらも、それを乗り越え復興し発展してきた、人類の文明。  
 だが、その発展にも、賞味期限があったようだ。
 人類が築いてきた文明は、SFなどで描かれる天空を突きさすような斬新な超高層ビル群が林立する近代都市のように、世界のほとんどの人々が未来永劫、ずっと発展し続けるものと思っている。
 俺も、そう思っていた。いや、願っていた、というべきかもしれない。
 核の全面戦争の危機を乗り越えて、いずれやってくる太陽の膨張で、地球が焼かれる日が来るまでは。  
 だが人類が造り上げてきた文明消滅の日は意外にも早く、そう、あの対戦を始めたときから、研究所で静かに進んでいたのかもしれない。
 欧米で人類最高の頭脳の持ち主、とも称されるチェスの世界チャンピオンが、AIと対戦して敗北したとき、この暗黒の異世界を暗示していたのだ。
 俺が、人体保存カプセルで長い眠りにつく前に。  
 自分で言うのもなんだが、山林や川岸などに転がっている朽ちた古木のような、初老の肉体が未来で再び蘇ることを願い、体を冷凍保存したのだが。
 AIの進化の速さは、俺の予想をはるかに超えていた。  
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