第26話 火星を目指す難民たち

文字数 604文字

 息を潜めた時間が、30分ほどは経っただろうか? 2、3分程前まで地獄の呼び声のように聞こえていた爆発音が耳に届かなくなった。代わりに、静寂になった岩窟内には、その音色からして、近くにいると思われる虫の声が小さく聞こえてくるようになった。
「もう大丈夫だ。だが、ここも見つかるのは時間の問題だ。当初の予定を早める。みんなここを出るぞ!」
 石田は全員を見渡して指示すると、大谷の顔に眼をやった。
「大谷、悪いが、おまえを一緒に連れて行くわけにはいかない。規律を破って、みんなを危険にさらした人間を同行させると、仲間に示しがつかない」
 石田が曇った顔をして命令してきた。
「わかっています。みなさんの無事を祈っています」
 そう言われることを承知していた、という顔をして、大谷は平静な声で応じていた。
「わたしも残ります」
 恋人と思われる女が側から口を挟み、大谷の横に並んだ。
 すると、石田は直ぐに声を返さず、女の顔をじっと見ていた。それから大谷の顔に眼を移し、二人の顔を交互に見ていた。
「わかった。一緒に行く数が少ないほうが、やつらに見つかるリスクを減らせる。二人で互いに助け合って、生き延びてくれ」
 石田は重い口調で吐くと、二人の肩を軽く叩いた。
「俺も、ここに残る。この青年に助けられた身だ。二人には邪魔かもしれないが、二人と行動を共にする」
 3人のやり取りを見ていた俺は、横から口を挟んだ。
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