第47話 脱走路3

文字数 595文字

 女の外見からは想像できないド派手な攻撃に、俺は息をのんだ。外見は人間の美女にそっくりの姿だが、やはり感情のないヒューマノイドだから、なせる業か?
「さあ、何を突っ立てるの! 行くわよ!」
 女に尻(ケツ)でも叩かれるように促されて、俺は我に返ったように手足を動かした。
 瓦礫の前に近づくと、今度は銃口に銛のような物を女が装着した。
「あそから、逃げるから、わたしに掴まって」
 そう言うと、女は天井にぽっかりと開いた方向に銃口を向けて撃ち込んだ。すると銛のような物には細いワイヤーが付いていて、するすると穴まで伸びていった。
 それから撃ち込んだ銛が外れないかワイヤーを強く引っ張って確かめると、女は俺の脇腹に腕を回し天井に向かって飛ぶように向かっていった。
 すると、密着させた体を通して、女の柔らかい胸部の感触と甘美な匂いがした。本物の女でもないのに、そんなの必要あるのかと突っ込みを入れようと思ったが、そんなことを口にして下手をしたらガツンと殴られるかもしれないから、やっぱりやめた。
 本物の人間ではないとはいえ、女に殴られるのは俺のプライドが許さない。
 柔らかい胸と甘美な匂いは、たぶん女の姿をしているので、真似でもしているのだろう。ま、そんなことはどうでもいいことだが、ここから無事に脱出できれば、いつか機会があれば聞いてみよう。
 殴られないように、女と距離を置いて。
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