第10話 鳥人間

文字数 604文字

 女は声を返さず、観察するような眼で、俺の顔を見ていた。と、そのときだった。
 女が背中を撃たれて、目の前にどっと崩れるように倒れた。すると倒れた女の背中からは赤い鮮血の代わりに、中国や台湾などの街で見かけたことのある線香花火ような青白い煙がもくもくと上がり、撃たれた傷口からは基盤のようなものが見えていた。
 いきなりの惨劇に、いったい何が起きたのか? とひどく驚いていると、巨大な怪鳥が、目の前に飛んできた。いや、怪鳥などではなく、翼のようなものを背に着けた人間だった。
 その鳥人間は、スターウォーズの帝国軍と戦う共和国軍のパイロットたちを連想させるような、顔がすぐには識別できない大きなゴーグルと古ぼけたヘルメットを装着しているので、男か女かはわからない。ま、その外見からして胸が膨らんでいないので、おそらくは男だろう。いや中には、胸がまな板のような貧乳の女もいるが。
 俺が25歳のとき、付き合っていた女がそうだった。美人だったが、スタイルからしてたぶんそうだろうとは思っていたが、ブラウスの膨らみは偽装していた。ピンクのブラジャーを外してみたらびっくり、想定外の予想以上の空の玉手箱だった。ブラの中にあるはずの、あの柔らかいものがなかった。いや、あることはあるが、胸板に気持ちの分だけ付いていた。
「僕に掴まれ!」
 鳥人間の声は、残念ながら期待をしていた、若い女の声ではなく、青年の声だった。
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