第31話 あの女が、また現れた

文字数 522文字

 女を眼にして、いきなり落雷にでも打たれたかのように、戦慄と悪寒が全身に走った。
 いきなり極寒の牢獄に、濡れた全裸のままで投げ込まれた思いだった。あまりの衝撃に喉から飛びしそうなほど心臓がばくばくと動いて、動悸音は全身に強く響く。
 いままで起きていたことは、やはり夢ではなかったのか? ひどく動揺しながらも即座に頭をフル回転させ、自問自答した。
 すると、あの意識を失う前のことが、脳裏に鮮やかに蘇ってきた。大谷に思いっきり胸を突き飛ばされた直後に、身近で何かが爆発したときのことが、脳に瞼に大きく浮かび上がった。
 大谷たちは?
 サイボーグのような体にされた自分のことよりも、大谷たちの安否が心を占めた。
 二人は、無事なのか? 大谷と、名前はマリアと名乗っていた彼女が無事であることを祈り、1分1秒でも早く、二人の安否を知りたかった。
 そこに女がゆっくりと近づいてきた。あのマネキンのような顔で。だが、その表情は違った。初めて眼にした時の微笑みは一切になく、怖い顔だ。
 思わず本能的に逃げ出そうと必死に起きようとしたが、体はなにかで固定されていて、首から下はまったく動かせなかった。
 その間に、女がどんどん側に近づいてくる。 
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