第５３話　新顔４

「まずい、アマール、逃げるぞ！」
　男が太い声で叫ぶと、また銛のように尖った弾丸を、巨大ロボットがいる天井に2発続けて発射した。そして俺たちを援護するかのように射撃を続けた。
「さあ、先に行け！」
　男はさらに怒鳴るように叫んだ。
　アマールは男に向かって頷くと、俺の左腕を引っ張った。
「さあ、走って！」
　今度はアマールが、俺に向かって怒鳴るように声を張り上げた。
　そう言われなくても、身の危険を察知した俺の足は本能的に動いた。ここに留まっていたら、間違いなく殺される。一目散に逃げる以外に、考える余地などない。すぐに床をけった。
　初めのときよりも改造された体に慣れてきたのか、逃げ足はさらに早くなつていた。いまなら１００メートルの金メダリストでもぶっちぎりで勝てるだろう。陸上トラックなら９秒台の前半ぐらいでは走れそうだ。
「さあ、こっちよ！」
　大声を張り上げたアマールの足は、その俺の快速の逃げ足よりも、はるかに速かった。さっと先回りすると、通路の反対側に銃口を向けた。そこにはドアがあった。
　アマールはドアにレーザー弾を発射して破壊すると、その中に入るよう促してきた。