第32話 無機質な部屋にて

文字数 489文字

 マネキン女は無言のまま傍に立つと、いきなりベッドが動いて移動しだした。俺は寝かされたままの状態で、別の部屋に移された。
 その無機質な部屋にいるのは、マネキン女と二人だけだ。人間の美女なら、大歓迎だが、相手は見た目の美しい外見と違って、中身は機械仕掛けのAI女だ。ここを飛び出して大谷たちの安否を確かめたい気持ちと、氷漬けの不安以外は心に湧いてこない。
「俺と一緒にいた二人はどうなった?」
 改造された自分の体のことより、一番知りたかったことを即座に訊いた。
「大丈夫、二人は生きています」
 その言葉を耳にして、俺は少し安堵した。だが、直に二人の姿を眼にするまでは、とても安心などできやしない。
「二人に合わせてくれ」
 俺は自分の置かれた立場を一瞬忘れて、女に頼み込んだ。いや、忘れたわけではないが、自分の心がそう強く訴えていた。
「いまは、できません。彼らとあなたとは立場が違います。わたしたちを攻撃した反乱軍の仲間だった彼らには、それなりの処分を課すことになります。大丈夫、殺したりはしませんから」
 女はまたよどみなく答えると、また観察するような眼を向けてきた。
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