第58話 袋小路5
文字数 594文字
汚水の死神の手が、もうすぐ足を掴まえようとしたときだった。
ドン! という鈍い音が管路を通じて耳に伝わると、押し寄せる汚水の勢いがいきなりなくなった。代わりに、ザー! ザー! という流れ落ちているかのような落水音が小さく聞こえてきた。さしずめ、水が滝に落ちるような音だ。
そこに、バシ! バシ! という音がした。眼にすると、アマールが管路上部に銛の弾を打ち込んでいた。
「わたしに掴まって!」
アマールが声を張り上げると、また上腕を引っ張られた。
俺はそれに反応して、幼い子供が母親に抱きつくように、アマールの半身にしがみ付いて足を上げた。
すると、勢いを失った汚水が小川のように足下を流れていった。
「足を下ろさないで! 汚水に触れると火傷するわよ」
その言葉に、俺はギョッとした。
足元を流れる汚水は、単に汚い濁り水ではないのか? そういえば、実験に使う薬品のような鼻を吐く臭いもする。
「あの水には金属を洗浄するための、あなたたち人間には劇薬も混ざっているわ」
俺はその声にすぐに反応して、足を高く上げた。だが、ずっとこのきつい姿勢を保てる自信はない。いずれ痺れ疲れ果て、耐え切れずに足を下ろしてしまうのは確実だ。
足が、いや下手をすれば、下半身全部が火傷を負うかも。最悪のケースは、あの大事な部分も使えなくなる。
それが頭に押し寄せ、全身の緊張が走った。
ドン! という鈍い音が管路を通じて耳に伝わると、押し寄せる汚水の勢いがいきなりなくなった。代わりに、ザー! ザー! という流れ落ちているかのような落水音が小さく聞こえてきた。さしずめ、水が滝に落ちるような音だ。
そこに、バシ! バシ! という音がした。眼にすると、アマールが管路上部に銛の弾を打ち込んでいた。
「わたしに掴まって!」
アマールが声を張り上げると、また上腕を引っ張られた。
俺はそれに反応して、幼い子供が母親に抱きつくように、アマールの半身にしがみ付いて足を上げた。
すると、勢いを失った汚水が小川のように足下を流れていった。
「足を下ろさないで! 汚水に触れると火傷するわよ」
その言葉に、俺はギョッとした。
足元を流れる汚水は、単に汚い濁り水ではないのか? そういえば、実験に使う薬品のような鼻を吐く臭いもする。
「あの水には金属を洗浄するための、あなたたち人間には劇薬も混ざっているわ」
俺はその声にすぐに反応して、足を高く上げた。だが、ずっとこのきつい姿勢を保てる自信はない。いずれ痺れ疲れ果て、耐え切れずに足を下ろしてしまうのは確実だ。
足が、いや下手をすれば、下半身全部が火傷を負うかも。最悪のケースは、あの大事な部分も使えなくなる。
それが頭に押し寄せ、全身の緊張が走った。