第19話 火星移住のわけ

文字数 414文字

 世界中で貧富の差がいっそう拡大し、ハエ(悪党たち)が飛び回るごみ山のように世界の秩序が荒廃していく中、アメリカ、中国、ロシア、欧州、そして日本の権力者たちは、幸せを掴むには宇宙フロンティアだ、という夢の世界を大衆に振りまいた。
 そして彼らの世界支配を盤石にするため、大型の宇宙船を大量に製造し、火星に大勢の人間を送り続けた。
 が、それは片道の切符だった。移住者の地球への帰還を絶対に許さない、という条件付きだ。
 その火星に人々が送られていくありさまは、かつて新大陸に夢を託し、ヨーロッパ諸国の人々が大海を渡っていく姿を彷彿させ、アジア、中南米からアメリカに活路を夢見て渡った難民たちも連想させた。
 ところが、火星への入植者の数が30万人に達したときだった。
 地球では、世界戦争が起きていた。
 だがそれは、アメリカとその同盟国軍対ロシア、中国軍、いわゆる第3次世界大戦、国同士の戦争ではなく、人類とAIの戦争だった。
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