第22話 人類は避難民となった

文字数 726文字

「宮島さん、さあ急ぎましょう」
 他にも理由があるのか、何か訳ありのような顔を付けて大谷がすーと腰を上げ、少し強い声で促してきた。
 俺たちは2つのなだらかな尾根を越え、次はとうとう三途の川を、いや3つの川を渡り、大小の岩が点在する山腹にやってきた。途中、無残に破壊尽くされて廃墟になった町があった。町には骸骨化した大小の死体が所々に雑草に埋もれるようにして点在しているだけで、動いて見えるのは野犬や猫、鳥たちだけだった。
 その町の一角だった。父親なのか母親なのかはわからないが、一体の大人と思しき蓋骨に抱きつくようにして、まだ幼稚園にも行っていないのでは? と思われる幼い子の骸骨が瓦礫の側に転がっていた。
 それを眼にした俺は、悲劇を招いた連中への怒りと深い悲しみを抑えきれず、絶叫しかけた。拳を握り、棒のようになってその場に立っていた。大谷から促されるまで、2体の遺骨の前から動けなかった。
 二人を手厚く供養してあげたい思いが強かったが、そんな時間はない。ここで時間を潰せば、ロボットたちに見つかるかもしれない。そのままやむなく町を離れたが、二人の哀れな姿が瞼にずっと浮かんでいた。
 あの小さな蓋骨は、男の子だったのだろうか? それとも女の子だったのだろうか? それが頭から離れないまま、重くなった心を引きずったまま30メートル近くはありそうな岩を超えたときだった。雑木に囲まれた高さが2メートル近い岩がいきなり動いた。
 驚いた。それは岩の表面の形を残しながら、開閉できるよう出入りする部分を削って作った扉だった。
 その扉が半分ほど開くと、3~40代と思われる3人の男と、まだ20代前後と思われる白人の美女が1人、中から出てきた。 

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