皮膚の刺激伝達と筋肉の収縮反応 ~佐久間看護婦~

文字数 2,131文字

「優秀なお医者さまと結婚できるなんて羨ましいですよぉ~。若い看護婦のあこがれですよぉ~」
「佐久間くんだけだよ、そんなことを言ってくれるのは」
「そんなことないですよ~。優秀な先生と結婚するのは看護婦の幸せのゴールですよぉ」
「そうかな。僕の場合、彼女にはもっといい人がいたんじゃないかって思う人がほとんどだしね。でも結婚するなら医療関係者は止めておいた方がいいよ。お互い交代勤務ですれ違いばかりだし…」
「先生とこは、お子さんとかまだなんですか?」
「うちは永遠に無理じゃないかな。初めからベッドは別々だし、たまに一緒になっても疲れているんだろうと思って声もかけにくいしね」
「えぇ~本当ですか? まだ新婚さんなのに先生かわいそぅ~」
できる限りの、はじめてのぶりっ子の黄色い声をだしました。
担当科は内科系だと言ってあります。一般的に内科系とは循環器科や呼吸器科、消化器科などのことを言い、神経内科をイメージする人はいません。でも嘘をついているわけではありませんし、整形とは病棟が遠く離れているので、ばったりなんてこともありません。
これまで食事のデートは五回、セックスしたのは四回目から。
「私も彼氏いないんですよ、寂しい者同士ですね。このまま帰りたくないなぁ」
心臓が爆発しそうほど緊張しながら、お酒の力を最大限に借りて腕を胸に押し付けました。そんなことができたのは、私以上に奥手で、手も握ってこない真面目な西條先生だったからです。そしてそれは洗濯石鹸や柔軟剤のCMにでてくるお母さんタレントかというくらい清楚、清潔な主任への当てつけなのです。
男の人のものを口に含んだのも、西條先生のものが初めてです。
「妻は嫌がって、そんなことしてくれないんだ…」
そう言われると、やらないわけにはいきません。ペニスの先を舌先で濡らすように舐めると生臭い男の匂いがしました。それでも両手でもって先っぽを唇に含んでスポスポすると、「あっ」と声がして、とろんとした表情になります。この間はそのお返しにといって、あそこをペロペロ舐められました。看護学生のときにはじめて付き合った彼氏がいましたが、同い年だったこともあり、自分の性欲ばかりで、自分勝手で下手くそでした。それと比べると大人のセックスは余裕があって全くの別物です。それからゆっくり指を入れられて、それが一本から二本になって、陰核を優しく摘ままれて、その後ろの穴まで…

「ふぅ~」
一つ息を吐くと、身体がブルブルと震えました。
(仕事中なのに、私は何を考えているのだろう…)
首を小さく振って妄想を吐きだすと、お腹の中が熱くなって、お尻の穴がきゅっとすぼまります。変態の先輩看護婦と同じになるところでした。
もう少しで清拭は終了。バスタオルの一部だけがこんもり盛り上がっているのを見ないようにして、てのひらを指で押してマッサージするように一本一本拭いていきます。柔らかいけれど、短くて節のごつごつとした男性らしい指で、人差し指と中指を合わせて握ると、西條先生のあそこと同じくらいの太さになります。無意識に指をスコスコ上下運動させていたら、微かに押し返すような反応がありました。少し強く握ると指先がぐにゅっと曲がります。
「安堂さん、安堂さん」
単なる収縮反応でしょうか。理由はわかりませんが、安堂さんは昏睡状態になると叩いても、頬を抓っても、大きな声をかけても目を覚まさないのです。でもやっぱり、皮膚の刺激伝達とか筋肉の収縮反応はあるようです。
トントンと肩をたたいても、ポンポンと痛くないくらいに頬を叩いても、やっぱり反応はありません。
「あっ、そうだ」と気付いて、チュッとだけキスをして急いで離れましたが反応はありません。童話とかで王女さまがキスをしたり、されたりすると目を覚ますからです。「本当に目を覚ましたらどうしよう」と思いながら、もう一度ブチューとキスをしましたが、やはり反応はありません。
(もう少し、きちんと確認をしたほうがいいかな…)
広い病室をぐるりと見渡します。トイレもお風呂もキッチンもついています。八人部屋の病室よりも広いくらいです。この特別個室はステーションから一番離れていますし、入口ドアには「清拭中」の札がかかっています。もし私に用事があってもドアをノックしてくれますし、ぐるりとカーテンがかかっていますから、少しくらいなら中で何をしているかわからないはずです。耳を澄ませてみましたが足音もしません。
看服のワンピースの二つ目と三つ目のボタンを外し、ナース服の中に手を差し込むと、ブラジャー越しにひんやりとした感触が伝わってきます。主任ほど大きくありませんが若さはありますし、形は良いと思っています。西條先生の優しい愛撫を思い出しながら、身体を前傾させ安堂さんの手を擦り付けるようにしてカップの中に差し込むとごつごつした指が胸の先に触れます。
「うっ」
ベンだこというのでしょうか。特に、中指内側の第一関節のあたりの皮膚が固くなっています。ちょうどその中指と人差し指の間に乳首が挟まり、固い皮膚のザラザラした擦れた感触が広がっていきます。今まで感じたことのない、捩られているような、じんわりと熱くなるような痛みです。
「あっ、んっ、あぁ~」

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