皮膚の刺激伝達についての考察 ~西條看護主任

文字数 2,125文字

腕時計をみると2時9分です。
バイタルチェックで見たときが2時ちょうどやったので、10分近くも経過したことになります。太陽が眩しかったんでカーテン半分閉めて、家族さん用の折りたたみの椅子をベッドサイドに置いて、なんで先生にならはったんか聞いて、つぎに何でうちが看護婦になった理由を聞かれて、そこからなんでや気が飛んでしもて、患者さんほったらかにしてました。眠ってたわけではないと思いますが、椅子に座ったままぼーっと華ちゃんとの記憶だけに没入してました。
こんなこと、看護婦になって初めてです。

「安堂さん、安堂さん…」
声をかけて、ゆすったり頬を撫でてみたりしますが、すでに深い昏睡に入られています。カフを巻いて、もう一度血圧を測ると110の65、脈も呼吸も戻っています。顔色にも変化はなく、ぐっすり眠ってはるようにしか見えません。
この一週間ほどは、安堂さんの昏睡は午後二時頃から午後四時頃までと決まって安定してきています。どんなふうに昏睡状態になるんか、話をしていると昏睡にならんのか、その直前に発作や予兆のようなもんがあるんかなど、あれこれ観察するのに、午後からマンツーマンの付き添い看護の時間を取ったのに、これでは意味がありません。
「安堂さん、安堂さん」
もう一度、救急救命研修の意識確認の時くらいの大きさで声掛けし、その次は、雪山で眠りそうな人を起こすくらいに、頬を何回も強く叩いたり、ベッドがぎしぎし揺れるくらいゆすったりしましたが、意識に変化はありません。
(しもたなぁ、ここからどうしょうなぁ…)
きつうしすぎて、赤うなった頬を撫でていると、ふと佐久間の言葉を思い出します。
「これは脳が動いていなくても、皮膚の刺激は脳に伝わっているということですよね」
否定はしませんでしたが、そうであれば叩いたり、ゆすったりしたら脳波に表れるでしょうし、覚醒しなくても痛みを感じているのであれば、目をギュッと瞑ったり、眉間に皺が寄ったりと、防衛反応があるはずです。でも昏睡中に勃起(その後には射精)したんは事実ですから、そのへんに手掛かりがあるんかもしれません。
(もしかすると、本能に関わる性的な刺激だけは別なんか…?)
一応、どんなもんなんか試してみる価値はありそうです。

「ふぅ」
大きく息を一つ吐いて、気を取り直してからお腹までかかっている掛布団を巻いて足元まで降ろします。浴衣越しですが、まだ勃起している様子はありません。部屋の入口には、「検査中」との札をかけてるので、ここには誰も近づきませんし、婦長にも声を掛けんようお願いしてあります。井上先生も今日から四日間は学会出張でお休み。念のため、入口のカーテンを引いて内側から鍵を閉めます(特別室だけは、内側からロックできます)。
片方のベッド柵はずして、紐をほどいて浴衣を広げていきます。いきなり射精してもシーツが汚れんようバスタオルを広げてお尻の下に敷きます。よう見ると、スポーツ選手のようなムキムキの筋肉質ではありませんが、ぜい肉のないがっちりした骨太の身体です。変化がようわかるように、ブリーフは膝ほどまでに降ろします。
小さく縮んだ親指ほどのペニスです。色艶はきれいですが、オムツ交換で見慣れた寝たきりのお爺さんのと、そないに違いはありません。それが性的興奮によって血液が流入し、あない一気に何倍にも膨張するやなんて、人の身体いうのはいろいろ不思議なもんです。
清拭は後回しにして、撫でるような強さでゆっくり刺激します。陰部には直接触れず、足から腰、胸部、肩へと摩りながらゆっくり上がっていきます。さらさらと乾いた肌のぬくもりが手のひらを通じて伝わります。性感帯が集まるとされている耳介や耳朶、首筋は、ゆっくり、やさしく撫で回します。耳の穴に指を入れてみますが、こそばがるような様子はありません。
覆いかぶさるようにして唇を合わせます。これまでどなたかとお付き合いされたり、キスしはったりいうことはあるんでしょうか。そう言うたら、一度だけ、伊藤さんというどことのう暗い感じの美人さんがお見舞いに来られたんですが、彼女さんではなさそうです。そのときも昏睡中やって、「あと30分くらいで起きられる思います」って言うたんですけど、お花だけおいて帰られました。
唇を首筋から鎖骨、乳首まで下ろします。一本だけ長い毛が生えてます。舌先で回しながら優しく吸い付きます。同時にさすりながら左手を降ろし、まだふにゃふにゃのペニスを摘まみ上げます。わたしはこのなんとも頼りないおちんちんを、虐めるようにいじったり、こねこねとこねくり回すのが好きなんです。子供の頃、舞鶴にあった母方のおじいちゃんの田舎で見た、カブトムシの幼虫にどこやら似ています。普段は権威をかさに威張ってても、気が弱くて情けない男はんの本性のようでもあり、それがなんともいじらしゅうて可愛いんです。上からチュッとキスをして、口の中に放り込んで、同じくらい柔らかいたまたまをモミモミしながら、れろれろ、はむはむ、くちゅくちゅしてあげます。ほんまにこのまま食べてしまいたいくらい可愛いもんです。
「安堂さん、もっと、おおきゅう固うならんと、うちのなかには入れたげませんよ」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み