自分の身体で初めて性行為をする ~安堂洸太郎~

文字数 2,388文字

安堂さん、やっぱり、うちのほうがええ気持ちですやろ~」
淫靡な京ことばのイントネーションが、鼓膜を震わせ身体の中に染みこんでいきます。
薄く目を開けると、ほのかな化粧の香とともに、流れるような睫毛と切れ長の目じりが波打っているのがぼんやり見えます。甘い唾液が口の中に滂沱のように流れ込み、その一部は口の周りから零れ落ちています。溺れそうになって、無意識に舌で押し返そうとすると絡めとられ、根元から吸い千切られそうです。
右手は二つの身体に挟まれ、その間にいくばくかの空間があるため、たわわに垂れ落ちた量感だけが、ずっしりと右手首に圧し掛かっています。押し上げると、柔らかい粘土のような白い肌が指の間から溢れだします。左手は、手首から先がすっぽり白い下着の中に隠れています。手の甲でもわかるサラサラ、ツルツルとした高級シルクの肌触りです。まっすぐに伸びた人差し指と薬指は、陰部を覆う細い布の両端から出ていて、鎌首のように折れ曲がった中指だけが、ヌルヌルとした入り口をうかがうように上を向いています。
不謹慎を承知でいえば、仰向けに倒されたお釈迦さんの仏像のような恰好です。
手首の先だけを使った緩やかなピストン運動に加え、指を軽く曲げ、亀頭の上部だけを手のひらを窪めた柔らかい部分で、さわさわ、さわさわと撫で回し、指先でその付け根の部分をかりかり、かりかりと、回転させるように刺激してきます。寄せては返す生温かい波にさらわれ、吞み込まれていくような快感です。身体を捻じってよがりそうになるのを、単発的に意識を逃避させて防ぎます。

西條さんの妄想の中にあるのは、わたしでも夫の西條医師でもなく、高校生の姿のままの親友の華ちゃんです。胸を吸われながら、立てた膝に自分の陰部を擦り付けています。お風呂の中で泡を塗り合いながら胸や陰部をまさぐり合ったり、プロレスごっこと称して、相手の下着を強引に下ろして電気あんまをしたり、女王様役と奴隷役に分かれて、手足をそれぞれ左右にタオルで縛って一方的な愛撫をしたりされたりと、タータンチェックのお嬢様女子高の制服を着た清楚な高校生には不釣り合いな、ハードな性的行為の映像がスライドされています。華ちゃんのあえぐ表情に一瞬、佐久間さんの顔が重なります。
やおら身体を起こすと、身体を上下さかさまにして跨ぎ直しました。
ようやく、瞼を上げられるようになりましたが、ふわりと広げた白いナース服の裾が顔全体にかかり視界が白くなります。もわっとした体温の中に見えるのは、水平に立つ白い背中と垂れ下がったブラジャーの後ろの生地だけです。
目を大きく見開いて、小さく深呼吸をするとほんのりと汗の匂いがします。目の前でそそり立った背中が前方に倒れると同時に、息をする鼻の穴に吸い込まれるようにお尻が近づいて、そのまま顔の上に乗り上げてきました。
シルクのショーツは脱がれていて、口と鼻の上に、直接ねっとりとした身体の中心線がすっぽりと収まります。陰毛は処理されているのか、もともと薄いのか土手のところにちょこっとあるだけです。何とか息はできるものの、遠慮なくどっしりと重力がかかっています。大きなおいどに潰される、さるかに合戦のさるになった気分です。

ジュルッとした音がして、膨らんだペニスが温かい粘膜に覆われるのがわかります。
「うっ」
声が出そうになるのを、柔らかかく膨らんだ女性の性器の中に、口を押しつけて耐えます。ざらざらした白いガーターストッキングと生身のねっとりした太ももが両側から顔を固定する形になり、プロレス技のように上と横から挟み込んできます。腰の左右に手を置いて、腕立て伏せをするような格好で、身体から突き出た私の陰茎を、真上から咥えていることがわかります。隙間なく丸く広がった唇がゆっくり、ゆっくりと上下し、口の中で亀頭の周りを舌先がチロチロと動き回ります。
「ふぅ~、はぅ~」
手で直立したペニスを左に傾けられ、白い看護帽をかしげながら陰茎の部分に笛を吹くように、唇や舌を這わせています。その下にある二つの睾丸が摩られ揉まれ、肛門から前立腺を撫で上げるようにギュッと押し込まれます。その度に声がでないように、陰部に顔を押し付けて耐える時間が続きます。
「あっ」
一方的な攻撃を少しでも食い止めるため、丸くすぼめた舌先を下からまっすぐに突き出すように膣に入れると、それが樋になって酸味の強い液体が流れ込んできます。
「安堂さん、上手よ。もっと、くちゃくちゃになるくらいまで、強うに吸うてくれてもええんよ…」
やわらかい両腿で左右から顔を固定され、前後にカクカクと腰を擦り付けられながら、その動きに合わせ首を左右に振り、吸い取ったり舌を前後左右に動かしたりして抵抗を続けます。自分の唾液と主任さんの中から出てくる分泌液で鼻のまわりがべとべとになっていきます。
「あっ、あっ、いい、そう、もっと…」
真上から咥えられた陰部からスポスポという音がして、抵抗むなしく、すべての皮膚触感、すべての性感が一か所に収斂していくのがわかります。できるだけ長く、西條さんの大きなお尻で踏まれていたい、いつまでも愛撫を続けてほしい、でも射精、絶頂も味わいたい、できれば穴の中におちんちんをいれたい、初めてのセックスをしたい、このままのお預けの状態が長く続くのは嫌だ…という、相反する欲望に抗うような、我慢と忍耐を強いられているような、どこか拷問を受けているようなそんな快感が続きます。
お尻に力をいれて穴をギュッとすぼめないと我慢できなくなっていきます。足先からの強張りがふくらはぎまで上がってきて、射精の一歩前まできているのがわかります。
(だめだ、もう我慢できない…)
そう思った時、押し付けられていた臀部が軽くなって、首の横にある膝がぐっと立ち上がり、スカートの裾から眩しいほどの光が入ってきました。
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