哀しきアンティの末路 ~赤江悠馬~

文字数 1,000文字

何の感慨も感動も思い入れもない卒業式が終わった。
司会の美奈先生はショックでお休みらしいが(前日までは元気だったという話もある)、無関係のアンティまでが休みとは…。「なんでかな?」と思っていたら、腹をかかえるような大笑いのニュースが飛び込んできた。アンティが美奈先生を強姦しようとして返り討ちにあい学校を馘になったという。あの日、あの時間、あの体育倉庫で。救急車がやってきて、安堂が搬送されたことは事実らしい。

(アンティ、やるときはやるな)
(美奈先生、俺も一度お願いしたい)
(でも、返り討ちに合うのがアンティらしい)
(それ、本当なの? あのアンティがそんなことするかな)
(ひとは、見かけによらんもんやなぁ)
(ショック、アンティはそんなことしないって信じてたのに)
(安堂先生の数学、好きだったのに…)
(美奈先生が誘惑してたんじゃないの?)
(ほんまは、違うらしいで)
(えっ? どういうこと?)
(うそ。それほんま?)
(なんで、なんで、それで、どうなったん?)

感動の涙はそっちのけで、文系進学クラスはその話題で持ち切り。「いい加減なことを言うな」「今日はそんな日じゃないだろう」と担任は必死に打ち消しを図るが、「嘘をついてはいけません」の人達だから、煙の向こうに何か隠していることは一目瞭然。書き直すヒマもなかったのか「司会・進行 伊藤美奈」の上から「佐藤良子」と不細工な式次第が貼ってある。佐藤先生、久しぶりの司会で盛り上げようと銀縁眼鏡新調して厚化粧で張り切っていたけど、ずっとざわざわしててしっちゃかめっちゃか。嫌われ者の生活指導の田村も竹刀振り回して怒ってたけど、言うことなんか誰が聞きますかいな。アオちゃんとミドちゃんも、「どういうこと?」ってビームを送ってくるけど、こっちもよくわからない。
卒業生代表の答辞を呼んだ麻希から、「美奈先生、ひどすぎる。安堂先生、可愛そう、悠馬ひどい」って睨まれた。あんたも美奈先生無茶苦茶にしてやりたい言うてたやんか。女心はようわからん。
可能性が高いのは、あの後、安堂が体育倉庫に入っていって、あの状態の美奈先生を見て、ムラムラして事に及ぼうとして反撃されたってとこか。俺らのことは表沙汰にできないので、美奈先生の怒りがすべてアンティに…。まさにアンラッキーを地で行く滑稽で憐れなアンティ。
でも、なんであんなところにアンティが? 
まっ、いまさら、どうでもいいけどね…。


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