指先で踊るお坊ちゃまのプレイボーイ ~西條医師~

文字数 2,107文字

『あなたたちは、いつこちらに戻ってくるのかしら?』
『早く病院の跡取りつくってくれないと、奈緒さんもいつまでも若くないんだから…」
ここ最近、数日に一度は、母から猫なで声の電話がかかってくる。あの気位の高い母親がここまで手のひら返しをするとはなかなかの見もの。奈緒のところには、なんども直筆の手紙が送られてきているらしい。
祖父の代からの医師一家で、叔父・兄弟共にすべて医者。おまけに、元ミス何とかだったという兄嫁も医師。僕が看護婦と結婚しようと思っていると言った時、家族全員が「はあ? 看護婦?」と猛反対だった。唯一、医療従事者ではない祖母のとりなしと、「一人くらいいいんじゃね」という兄貴の突き放しで結婚だけだけはできたものの、その扱いはぞんざいで、こっちも仕事を理由にお泊りなしのお盆と年末年始の挨拶くらいの関係だった。
まぁ、地方医大の兄貴からすれば、帝大出身の次男が女医と結婚し、実家に戻ってくるのが怖いのだろうけどね。当初は、あれほどちやほやされてた兄嫁も来年で40代突入。この10年、「孫の顔はいつ見られる」「跡取りを生むことがあなたの仕事」と24時間365日言われ続け、医師の仕事は辞めさせられ不妊治療とストレスで身体的にも精神的にもボロボロらしい。更に唯一かばってくれていた祖母が亡くなってからは、両親だけでなく、兄貴との関係も最悪だとか。
「早く離婚して新しい若い嫁をもらえ。そうでなければ廃嫡だ」
そう言われているようだが、兄嫁にまだ未練があるのか、右往左往している様子。
母娘かと思うほど同じS極の母と兄嫁が上手くいくはずがない。従順で気働きができ、優雅でおしとやか、自分とは正反対の奈緒を気に入るのは当然のこと。「看護婦なんてみっともない」「お前はその女に誑かされたんだ」と最後まで結婚に反対していた父さんまで、「老後は一緒に住みたい、ゆくゆくは奈緒に介護してほしい」と言い始めているらしい。
僕は、母や兄嫁を見ていたせいか、医療従事者ではなく祖母のような人と結婚したいと思っていた。医師専用のお見合いパーティには何度か参加したけど、実家の病院の名前を出すと、目の色が変わる女ばかりでうんざりしてた。女性に囲まれてちやほやされるのだけは楽しかったけど、どれだけ寄ってこられても手を出せないのがもどかしかった。
妻の奈緒とは、院内研修会で副院長に挨拶に行った時、その近くに彼女が座っていたのがきっかけ。人生始まって以来のぞっこん一目惚れ。最初は「うちの病院の結婚したい看護婦ナンバーワンやぞ」「お前みたいな奴が相手にされるか」「やめとけ、やめとけ…」と笑われたが、彼女もいい年だし早く結婚したかったようで、何とか電話番号をゲットし、とんとん拍子で話が進んだ。
「結婚すると、女性にモテる」
それは結婚しても遊びまわっている先輩の自慢話か都市伝説だと思っていたけれど、そうではないらしい。落ち着きと自信がついて、女性からは魅力的に見えるからだろう。
奈緒に不満ないし、多少は申し訳ないとも思う。でも仕事が忙しいし、セックスはあまり好きではないのか断られることも多いし、他の女性が寄ってくれば、軽い浮気心が芽生えるのは仕方がない。父親だけでなく、先輩医師や助教授、教授含め、浮気していない医者なんて聞いたことない(嫁の尻に完全に敷かれている兄貴くらいか…笑)。

いまの手駒は三人。
妻の同期の外来看護婦の吉田京子
妻が精神内科に転属する前にいたガン病棟の久保田茜
そして、妻の部下でもある精神内科の佐久間千紗
それぞれ、月一くらいで、デートしてセックスする。
吉田くんは、マゾのようで倒錯したハードなプレイを望む。
「京子をもっと虐めてください。西條先生の奴隷にしてください」
媚びるような潤んだ目で見られると、吸い込まれるようにより強く虐めたくなる。
「京子は変態だな。どうしてほしいか口で言ってみろ」
革の淫具でM字に拘束し、男根の形をした首振りのバイブをいやらしく突っ込んでいく。自分はこれほどまでにサディストの面があったのかと驚くくらい。
逆に久保田くんは、自分が上にのったり、こちらの手を縛ったりするのが好きだ。顔面騎乗位で、窒息させられるほどに陰部を擦りつけてくる。また佐久間は、一回り年下の二四歳なので、何でも言うことを聞いてくれ、フェラだけでも恥ずかしそうだし、騎乗位やバックなどもぎこちなく、少しずつ開発していくのが男冥利に尽きる。
僕とのセックスに夢中になってきたのか、今日はとても積極的で、いつもより大きな声を上げて、あれこれねだられて隣で満足して眠ってしまった。
独身の時は「セックス=結婚」を意識されると困るので手を出さなかったけれど、いまはみんな既婚者であることを前提に付き合っているわけだし、上手くやっているので妻や病院にバレることもない。それ相応のポジションを用意して、将来の理事長を確約してくれるのであれば、来年くらいには実家の病院に帰ってあげてもいいかもしれない。でも、さすがに法人内の看護婦と付き合うとあれこれ問題になりそうなので、このモテ期をもう少し満喫していたい。
やっぱり、看護婦、スケベでいいよね…。
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