第51話 瀬名さん、墓参しませんか?
文字数 1,216文字
瀬名さんの実家のお墓は北の地方へ移転する費用がないため都内の駒込に残っていた。以前僕は瀬名さんに付き合って一緒にお参りしたことがある。
今度は「気根家代々の墓」に瀬名さんがお参りしてくれる番となった。
梶田のおじちゃん一家と一緒に共同墓地にあるお墓の前で仏花、ローソク、線香を立て、全員で合掌した。
梶田のおじちゃんが冷やかす。
「いやー、麗人 ちゃんよ。いいヨメ見つけたなあ」
「まだそんなんじゃないです」
「えー、麗人 おじちゃん、満月 ちゃんと結婚するんじゃないのー? だって夕べ・・・」
僕は大慌てでユズくんにシーッ、と指を立てたけれども間に合わなかった。
母親がユズくんを問い詰める。
「ユズくん、麗人おじちゃん、何してたの!?」
「あのね、あのね」
瀬名さんも目を丸くして何のことかと驚いている。
そうなのだ。僕は合意の上でもなく、瀬名さんが寝ている間にソレをしてしまったのだ。ああ、もうダメだ・・・
「麗人おじちゃんねー、ミツキちゃんの頭をよしよし、って撫でてたの」
全員、きょとん、としている。
母親が口を開いた。
「それだけ?」
こくん、とユズくんが頷くと全員がケラケラと笑い出した。
「わははは。ほほえましいのー」
「まったく。ばあちゃん、あんたのひ孫はまだまだできんわー」
父親が墓の前に向かってこんなことを言っている。
ほっておいて欲しい。
喧騒の中、僕は瀬名さんにそっと囁いた。
「すみません。瀬名さんの寝顔見てたらつい・・・」
「気根くん、卑怯よ」
「はい・・・弁解の余地もないです」
「ううん。今度はちゃんと起きてる時にして」
そう言って、瀬名さんはくすっと笑った。
ああもう。
淡白のループにそんな笑顔を突然入れる方がよっぽど卑怯だ。
・・・・・・・・・・・・・
瀬名さんは明後日からまた仕事なので、夕方の新幹線で帰ることになった。さすがに車で東京までというのはもう疲れ果ててしまった。
新幹線のホームに僕と母親で見送りに行った。
「瀬名さん、ありがとうね」
「お母さま、こちらこそお世話になりました」
「はい、これ」
そう言って母親が封筒を渡す。
「え、これは・・・」
「お車代よ。受け取って」
「え、そんな。受け取れません」
「いいえ。ウチの都合で来てもらったんだから、お願い。それにね」
「はい」
「いずれ財布も同じになるかもしれないでしょ?」
うわっ。
「わかりました。ちゃんと稼いでちゃんと貯めておきます」
うわわっ。
丁寧にお辞儀する瀬名さんを乗せて新幹線は行ってしまった。
思いがけず母親と瀬名さんが2人の世界に浸ってしまったことに軽く文句を言おうとすると、逆に母親からクレームが出た。
「麗人、あんたにはがっかりだわ」
「はい? 何が?」
「男と女が一緒の部屋に寝てて・・・頭を撫でただけ? 園児?」
「何言ってんの? 前は自制しろとか言ってたくせに。それに、シズルちゃんとユズくんもいるのにどうしろと?」
「さじ加減、てものがあるでしょ」
しょうがないじゃないか。
これが僕と瀬名さんなんだから。
今度は「気根家代々の墓」に瀬名さんがお参りしてくれる番となった。
梶田のおじちゃん一家と一緒に共同墓地にあるお墓の前で仏花、ローソク、線香を立て、全員で合掌した。
梶田のおじちゃんが冷やかす。
「いやー、
「まだそんなんじゃないです」
「えー、
僕は大慌てでユズくんにシーッ、と指を立てたけれども間に合わなかった。
母親がユズくんを問い詰める。
「ユズくん、麗人おじちゃん、何してたの!?」
「あのね、あのね」
瀬名さんも目を丸くして何のことかと驚いている。
そうなのだ。僕は合意の上でもなく、瀬名さんが寝ている間にソレをしてしまったのだ。ああ、もうダメだ・・・
「麗人おじちゃんねー、ミツキちゃんの頭をよしよし、って撫でてたの」
全員、きょとん、としている。
母親が口を開いた。
「それだけ?」
こくん、とユズくんが頷くと全員がケラケラと笑い出した。
「わははは。ほほえましいのー」
「まったく。ばあちゃん、あんたのひ孫はまだまだできんわー」
父親が墓の前に向かってこんなことを言っている。
ほっておいて欲しい。
喧騒の中、僕は瀬名さんにそっと囁いた。
「すみません。瀬名さんの寝顔見てたらつい・・・」
「気根くん、卑怯よ」
「はい・・・弁解の余地もないです」
「ううん。今度はちゃんと起きてる時にして」
そう言って、瀬名さんはくすっと笑った。
ああもう。
淡白のループにそんな笑顔を突然入れる方がよっぽど卑怯だ。
・・・・・・・・・・・・・
瀬名さんは明後日からまた仕事なので、夕方の新幹線で帰ることになった。さすがに車で東京までというのはもう疲れ果ててしまった。
新幹線のホームに僕と母親で見送りに行った。
「瀬名さん、ありがとうね」
「お母さま、こちらこそお世話になりました」
「はい、これ」
そう言って母親が封筒を渡す。
「え、これは・・・」
「お車代よ。受け取って」
「え、そんな。受け取れません」
「いいえ。ウチの都合で来てもらったんだから、お願い。それにね」
「はい」
「いずれ財布も同じになるかもしれないでしょ?」
うわっ。
「わかりました。ちゃんと稼いでちゃんと貯めておきます」
うわわっ。
丁寧にお辞儀する瀬名さんを乗せて新幹線は行ってしまった。
思いがけず母親と瀬名さんが2人の世界に浸ってしまったことに軽く文句を言おうとすると、逆に母親からクレームが出た。
「麗人、あんたにはがっかりだわ」
「はい? 何が?」
「男と女が一緒の部屋に寝てて・・・頭を撫でただけ? 園児?」
「何言ってんの? 前は自制しろとか言ってたくせに。それに、シズルちゃんとユズくんもいるのにどうしろと?」
「さじ加減、てものがあるでしょ」
しょうがないじゃないか。
これが僕と瀬名さんなんだから。