Higher Ground【7/7】
文字数 607文字
原子力飛空艇。
自動操縦のようだが、運転室のドアを壊して入るとわたしは、ハンドルを動かして、帝都湾……海を目指す。
高度はどんどん低くなってきている。
帝都や和の庭にこんな動力で浮いて進むものを落とすわけにはいかない。
体力に限界がきているが、どうにか持ちこたえようと思う。
クーデターはどうなったのか。
他の戦局を知らないが、折鶴旅団の首魁は調伏させた。
あとは盛夏たちがどうにかしてくれるだろう。
ああ、鵜飼に蜘蛛切返さなくちゃ。
多賀郡館の蜘蛛切も、わたしと一緒に帝都湾に沈むのを考えると、忍びない。
この飛空艇、着水して大丈夫か?
ダメな気がする。
頭をいろんなことがぐるぐると駆け回るうちに、帝都湾に出た。
危なかった。
爆発してたら大変なことになっていた。
海に落ちても大変なことに変わりはないだろうけど。
目が回る。酩酊する。
「ごめん、つばめちゃん。勝ったけれども、帰れそうにないや。ああ、みんなでキャラメル善哉、最後に食べたかったなぁ……」
陸が見えなくなったところでわたしは呟き、そしてハンドルを持つ手が離れ、転倒する。
目を閉じる。
もう二度と眠りから覚めないような気が、なんとなくしたけど、起きていることは不可能に思えた。
だからわたしは、原子力で動かしているタービンの音だけが響いている中で、眠りに就くことにしたのだった。
〈了〉