Nuthin’ but a G thang【7/7】
文字数 347文字
山の頂に着く頃には、日が昇っていた。
あの庵室は消えていて、五輪石のあった場所に、お供え物の饅頭が、ちょこんと置いてあった。
「盛夏。この饅頭、誰から誰へのお供え物かな」
「さぁて、ね。庵室も消えているし、見てごらんなさいよ」
盛夏が指さす方角を向くと、そこには、あの集落が、丸ごと消えていた。
ただの盆地になっていたのである。
……いや、建っていたのではあるが。
数知れぬほどのお墓が。
村のように大きな、そこは一帯が墓場だった。
「ま。こういうことも、あるでしょ。調伏済み、っと」
鏑木盛夏は、その一言で、今回の一件を片付けた。
わたしは、
「あー。だからアヤカシってのは嫌なのよ」
と、髪の毛をくしゃくしゃにかき乱してみたのだった。
〈了〉