Bone Machine【3/5】
文字数 893文字
……例えば。
……ティンカートイでできたORゲートがあったとして。
……AとBという入力用の軸のどちらかが右側に押し込まれると、出力用の軸が動く。
……NOTゲートやANDゲートも同様にティンカートイで作れる。
……三目並べは、二進数という二者択一の言語にたやすく言語化できる。
……なのでティンカートイのゲートの組み合わせ、1と0の代わりに×と〇を操作すれば、この状況を処理できる。
……次に、ティンカートイ製のスペルチェッカーを考えてみましょう。
……これは、アルファベットの各文字を、1と0、つまり軸の上の糸巻きのパターンを使って表現すればいい。
……スペルチェックを行う装置は、ティンカートイとスペルを記号化した木製の記録軸からなるデータベースを使って作ることができる。
……ティンカートイが大量にあれば、この方法で文章全体を処理できる。
「単純なモデルで考えると、つまりはそういう仕組みで、演算処理装置は動いているの」
一気にそこまでしゃべり切ると、盛夏は教卓の上に置かれた湯のみでお茶を飲んだ。
「お茶がぬるくなる前に話し終えられてよかったわ。で、みなさん、理解できたかしら」
コノコが挙手をして、
「説明されてもわからないということが、わたしにはわかったのだー!」
と、笑顔で言った。
それを見てわたしは、
「天然なのかしら、この娘は……?」
と、不思議に思った。
講義はまだまだ続くようだ。
塾生ってわけではないわたしは、こっそりと塾邸から、外に出ることにした。
「さて。どこに行こうかしら」
カーキ服にカーキズボンの男装のわたしは、歩いていると奇異な目で見られてしまっているが、お構いなしに、黎明地区の石畳を歩く。
「そうだった、塾生になったあの娘たちのつくる同人雑誌の『同人』になったのを忘れてたわ。夜、また水館にはお邪魔しましょうか」
同人雑誌。流行っているものねー、とわたしは、他人事のように感じながら、歩く。
そうしていると、駅に着く。
浅草にでも行くとしましょうか。