第9話 落ちてこない言葉

文字数 215文字

 こういう時が、つらい。あれやこれやと考えても、言いたいことはあっても、それが確かなようで不確かで、はたしてしっくり来る言葉がない。ないから、探せば、探すほど、ますます見つからない。
 しまいには、何もなかったんだ、自分には、と思えてくる。が、それも嘘に思えている。何か、とは何だったんだろうと思う。
「何もなかった」と心底から思えたら、踏ん切りもついて、さっぱりした気持ちになるだろうと思う。
 しかし、「何」とは、何だったんだろう。
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