第49話 鳩首つきあわせ

文字数 712文字

「要するに、きみが長々と続けてきたこの連載で言いたかったことは、世界を創造せよ、ってことでいいのかね」
「うん。創作、作品をつくるって、ただ文字上のことだけでなくて、現実世界に生かされないと、思想もへったくれも便所の紙に等しいということだ」
「同時進行するように、自己と、この社会の創作を、か。しかしきみはいつも社会と逆行しているよ。同時進行とは程遠いね。誰でも、自分の望む世界なんか現実に創造できない。せいぜい、ひとり閉じこもって、のっぺりした画面に顔を突き合わすのが関の山。また戦争が起こっている世界を見よ。誰も望んでいないようなことが、望まれてしまうんだよ」
「権力者がいない世界なんて無いからな」

「みんなが助け合って平和に生きてた世界なんて、みんな貧乏で、温厚な人たちが集まった集落でしかあり得ないね。そしてそんな世界はあり得ない」
「いっそ、もう世界なんて滅びてしまった方がいいのかもね」
「すると、今までしてきたことがぜんぶ無になる。今までしてきたことを認めながら、無にせず、立ち帰っていくことがほんとうの勇気だと思うけどな」

「すごい時代だね、コロナに核か。人命に、直接関わることばかりだ」
「自分たちがしてきたことは、しっかり返ってくる。ぜんぶ、オレらの責任さ。地球の裏側で起きた津波は、表にも寄せて繋がってくる。もともと繋がっていたことを忘れていたね」
「どんなにコンピュータが便利になったところで、戦争ひとつ止められないんだからな。ナンジャコリャ、って思うよ」
「また人間め、失敗したな、って、カミサマ、見てるだろうね」
「試されてるんだろうね、何のために人として生まれ、生きてるのかを」
「ずっとずっと」
「ずっと、ずーっと」
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