第35話 カメラマンと被写体

文字数 530文字

 こうして書いていれば、「見られる」ことを意識する。投稿するからだ。
 あたかも、イイ・カッコ・シヨウとか、ヨク・ミラレヨウとして、ポーズをつくって、映りのいいスナップ・ショットであろうとするように。
 一葉に、「私」が切り取られることに緊張する。カメラマンは、「リラックス、リラックス、はい、笑って!」などと言う、「そのまま、そのまま」などと言う!
 私は被写体でしかない。私に、私が切り取られる一瞬を映す、あの丸いボタンを押す指はない。
 カメラマンは自由だ。私は、彼の手の中にある。彼の自由意思決定に、私はつくられる。

 ── 私は被写体であり、カメラマンである。読者であると同時に、作者である。とぼしい脳を使い、使われ、ばたばた羽を広げる。水あそびをしているように見られるが、本人、飛ぼうとしているらしい。
 どこへ? 水たまりの、上へ
 飛ぶこと、それ自体が目的であって、どこへという目標はない。
 飛んでいるうちに、どこかへ行くことになるだろう。
「おまえは自由でいいな」カメラマンが言う。
 何が、自由なもんか、と私はおもう。
 ああ、自由、自由!
 おまえも、私も、もう自由だった、

自由だった。
 おまえはおまえを、わたしはわたしを、不自由と思えるほど自由だった!
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