第34話 夢みるニーチェ

文字数 301文字

 かれは、詩人であった── 詩は、文章ほど、「説明」を求めない。
 文は、説明を要求する。だが、詩は、()のままである。
 文は、論理を必要とする── だが、詩は、武装を必要としない。
 不条理な生を、論理で説明がつく由もない。
 かれは「歌」に身を寄せた。
 生を、かれはこよなく愛した。
 血の通った生を、血の通った言葉で表現するには…

 「ツァラトゥストラ」の第三部、「後の舞踏の歌」。
 生を女に見立て、歌い続けるニーチェの描写は、美しい。
 美しいものにふれると、わたしはかんたんに涙ぐむ。
 ニーチェは、詩を書きたかったのだ。
 語るよりも、歌っていたかったのだ。
 だが、語ることから、生涯、逃れられなかったのだ。
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