3-4 嫁と大姑

文字数 607文字

岡崎での仮祝言以来、女房にする人をいつまでも実家に放って置くのも変だと考えていたので、祖母の具合の悪さもあり、予定よりも早く東京へ上京するように希望して、妻を急がせた。

義母と叔母が妻を連れて上京してきたのは2月の半ばころであった。これは大火事から2年目の事である。

新婚家庭であるが同居している祖母との生活。祖母は育ちもよく躾には厳しい人である。

一方、妻は何も外のことを知らない20歳である。2人の間には色々あったのだった。

俺が仕事に出ている間は2人での毎日の生活。
妻にとっては息の詰まるような想いだっただろう。家に帰ってくるとなんとなく雰囲気が良くない日があっても、俺は嫁と姑のどちらにも味方は出来ないのである。楽しい家庭を望んでいたので、小さな事でもいさかいの起きない事を毎日祈っていた。

そんな妻が元気で過ごせるように、自作で家の増築をすることにした。それはミシン小屋を作るのだ。どういう部屋にしようかと相談する時の妻の笑顔が嬉しかった。

ここにいれば2人が直接接触することはなくなるので、少しでも妻の気が紛れればとの思いが俺に日曜大工をさせていた。

妻の近所での評判は非常に良く、「掃き溜に、鶴だ」と、隣のAさんはいつも言っていた。

Aさんは面倒見の良い新潟出のご夫婦であったが、この辺りの2回目の火事でお宅が全焼してしまい、江戸川区に引っ越していってしまったのだった。
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登場人物紹介

時は昭和の始め。

貧乏ではあるが東京の下町で活き活きと生きている少年がいた。

名前はのぼると言う。

のぼるが駆け抜けた昭和という時代とはどんなものだったのだろうか。 

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