3-5 長男誕生

文字数 588文字

結婚した翌年の昭和31年11月のある朝の事、身ごもっていた若妻が急に産気づいた。

急いで江東病院に連れて行きしばらくの間は付き添っていたが、まだ生まれそうになかったので手伝いに来ていた義母に後を頼んで会社に行った。

ところが会社に着くと、すぐ事務の女の子が電話だと言って来た。

受話器を取った俺の耳に、

「どっちだと思う」と義母の声。

生まれたな、と感じた私。

「どっちでもいいが、まともな子か。」と聞く。

「チンチンのついた真っ赤な子だがや」と義母。

その日は社長に残業を断って、夕方に江東病院へ向かった。

息子と初対面の父の私が思わず、「これが俺の子かよォ」

と言ったことに同室の妊婦さんの爆笑が起こった。

頭の毛がおでこ迄伸びて、XXのように毛深い、本当に真っ赤な赤ん坊であった。

よく泣く元気な男の子で、本当に生まれてきてありがとうと、感謝をしたのだった。

当時、親しくしていたYチェインのMさんご夫婦も交えて、この子の名前付けに1週間を費やした。

名前は最後に二つの候補が残った。あとに数字を付けると次々に子が出来るとの意見もあった。俺は苗字が2文字なのに名前ののぼるが漢字で1文字であることに不満があったので、「誕生ベビー」は2文字の名前に決定する。

かくして、この子は昭和31年11月に我が家の長男として2人の間に誕生したのである。
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登場人物紹介

時は昭和の始め。

貧乏ではあるが東京の下町で活き活きと生きている少年がいた。

名前はのぼると言う。

のぼるが駆け抜けた昭和という時代とはどんなものだったのだろうか。 

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