1-13 祭り(パート2)

文字数 512文字

秋の小松川神社のお祭りは、幼い頃の私には楽しいものであった。

神社の境内にはそれぞれの町会の神輿庫があり、山車・子供神輿、大人神輿が入っていた。祭りにはそれらが連なって、町中を2日がかりで練り歩いた。

休憩所となるお店の前には沢山の御馳走が出ており、行く先々で休むともてなしを受ける。これは若い衆のよきレクリエーションの場にもなっていた。小松川4丁目は普通の神輿だが、3丁目のは珍しい白木神輿であり人目を引いた。最後は今の京葉道路を車止めにし、1丁目から4丁目までの神輿が全部集まる。集まった光景はスゴカッタ。

小学生だったある年、私は大うちわの係になり、神輿の後からついて行った。その日は行く先々の休憩場所で、知らない町内のおじさんがそこで出ているお菓子・果物・飲み物・お握り等を持って来てくれた。最初は喜んで貰っていたが、あまりにもてなされるのでだんだんと気味悪くなった。

これを帰ってから祖父母に話したが、

「ひょっとしてどこかで母が見ていて、その人たちに頼んだのかも知れない」と言ったが、3才の時捨てた子と分かるはずは無い。ともあれ、人に親切にされることはなんとも嬉しい事と、この時ほど思った事はなかった。
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登場人物紹介

時は昭和の始め。

貧乏ではあるが東京の下町で活き活きと生きている少年がいた。

名前はのぼると言う。

のぼるが駆け抜けた昭和という時代とはどんなものだったのだろうか。 

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