1-7 学校(パート1)

文字数 603文字

私の頃には授業参観はなかったが、小学校1年生から高等小学校までの先生はなぜか皆んな怖かった。
私はカスリの着物にへこ帯・下駄での通学だった。

そう、この頃の小学校の修学旅行は伊勢・奈良・京都が定番だったが、私の頃は戦時中だったため、伊勢だけになった。この時も費用をどう工面したのか租父母が修学旅行に行かせてくれた。

校庭にはたくさんの父母が見送りに来ていたが、私に見送りはなく一人だった。汽車の中で食べる物を一杯に詰め込んだ友だちのリュックを見ても羨ましいと思ったが、それを口には出さなかった。私の持ってきた食べ物は、竹皮に包んだ握り飯と駄菓子の残り物だった。

ところがこの駄菓子が友だちに意外な人気となった。みんなの持ってきた物と少しずつ交換し、私もみんなと同じ喜びを味わった。

というのも、私の持って行ったのはクジ引き物の一等の菓子が多かったのである。駄菓子屋ではクジ引きを店に出す前に必ず一・二等が一つ残る様に調整をしているのであった。祖母がそれをこの日の為に残しておいてくれて、それがリュックの中に入っていたのである。だから友だちにとっては憧れていた夢のようなお菓子なのである。

私も友だちの父母の暖かい心のこもった食べ物を頂き、彼等もめったに口に出来ないお菓子を食べることができたのである。

みんなと一緒に修学旅行を楽しむ事が出来たし、私はここでも祖父母の心使いに感謝したのだった。
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登場人物紹介

時は昭和の始め。

貧乏ではあるが東京の下町で活き活きと生きている少年がいた。

名前はのぼると言う。

のぼるが駆け抜けた昭和という時代とはどんなものだったのだろうか。 

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