1-16 代理教師

文字数 404文字

高等小学校に入って半年過ぎた頃だった。担任の吉野先生に連れられて荒川の土手に徒競争の練習に行った。皆んな、久しぶりの校外授業に大はしゃぎ。私もこの日は体が軽かった。

私は何組目かの出走だったが、ゴールにいた別の先生がタイムを計っていて、

「おお、今の奴、速かったなあ」 と言ってくれた。


その先生が帰りに、わざわざ吉野先生に記録表を見せたらしい。おかげで次の体操の時間から、先生が特に眼をかけてくれるようになった。

吉野先生も体操教師であったが、説明をした後の実技は、
「のぼる、やってみろ」と言う。
それを皆んなの前でやってみせる。

他の勉強時間ではお呼びではなかったが、体操では私はスターであった。

おかげで得意になって体操、鉄棒、陸上と何でもやったが、なぜか、ろくぼくだけは全然ダメだった。いまでもこれはブーである。

なぜ、これだけができなかったのかは、今でも不思議である。
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登場人物紹介

時は昭和の始め。

貧乏ではあるが東京の下町で活き活きと生きている少年がいた。

名前はのぼると言う。

のぼるが駆け抜けた昭和という時代とはどんなものだったのだろうか。 

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