2-13 買い出し

文字数 785文字

近所の娘数人を連れて買い出しにも良く行った。新小岩から総武線に乗って幕張へ向かう。

そして、ばらばらになって芋農家を目指すのだ。
なかなか売ってくれない農家が多かったが、それでもみんな何とか頑張って買って来た。

帰りの集合場所にはそれぞれ5貰目(15Kg)位の芋を担いで集まってきた。身体の弱い子もいる。決して頑丈とは言えない俺だが、その子の分を手伝うと10貫目位を持ってゆくのはいつもだった。

ある日、集合場所の京成実籾駅に着いたら、お巡りさんが買い出しを調べていた。

さあ、大変な事になった。見つかったら没収される。

それを避けるためにみんなと相談し、それを回避するために幕張まで歩く事にした。実はそれは4Kmもの道だった。これだけの距離をそれぞれ5貫目の荷物を担いで歩くのである。

最初の頃はみんな元気だったが、重さに堪えられなくなり始めると、段々無口になり、中にはリュックがやぶける娘、靴が裂ける娘がでる。俺も痛みをこらえて歌を唄ってみんなに元気を出させようとするが、とにかくこの日の幕張駅は遠かった。

やっとの事で、どうにか幕張駅に着いたが、ここでも一斉検査をやっていたのだ。
それを見て泣き出した娘をなだめつつ、みんなの前に立ち俺は検査に来た巡査に訴えた。

俺の訴えもあるが、陽が暮れかかっていた事もあり、何と目こぼしをしてくれたのだった。
ただでさえ大変な上にこんな事もあり、くたくたに疲れていたが、みんな持ち帰る事が出来た。
その日はなぜか新小岩の交番も、見て見ぬふりをしてくれて通してくれた。

そんな事があってから俺の人気は鰻のぼり。

戦争で近所の男の子は段々少なくなる。そんな中で男の子の一人に俺を選ぼうとするのが増えていった。でも俺には付き合っている彼女がいたのだった。これは終戦後の昭和22年ごろの話である。
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登場人物紹介

時は昭和の始め。

貧乏ではあるが東京の下町で活き活きと生きている少年がいた。

名前はのぼると言う。

のぼるが駆け抜けた昭和という時代とはどんなものだったのだろうか。 

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