2-23 運命の出会い

文字数 468文字

あの大火事のことは岡崎の叔母の元にも届いていた。

その折り、火事見舞いと称して上京した叔母が、一人の娘を連れて来たのだった。
災難時に人手が要るだろうとの心遣いであった。

火事場の整理はその時19歳だった彼女を使いながら俺がやり、祖母は小松川の家で面倒を見て貰った。

叔母は数日経つとその娘を残して帰って行った。

小松川の叔父は、 火事場を整理した後の建築仕事に毎日来てくれた。

まだ未成年だった彼女にとって、一度自分の実家に遊びに来ただけの人の家に残されて、色々仕事を言われながらも、さぞ一人で寂しかった事だろうと思う。

こうして紹介された後、お互いに結婚する前提での付き合いが始まった。

東京と愛知の長距離恋愛である。
妻によるとその頃に2人が交わした手紙は行李に一杯あったという。

ある日の手紙に稲穂が添えられていた事があった。俺がその事を俳句にし新聞に投書したら、入選してしまった。その新聞の切り抜きを送って、喜ばれた事もあった。結婚前の心根のキレイな時期でもあった。

「待ちわびし 便りに添える 初穂かな」
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登場人物紹介

時は昭和の始め。

貧乏ではあるが東京の下町で活き活きと生きている少年がいた。

名前はのぼると言う。

のぼるが駆け抜けた昭和という時代とはどんなものだったのだろうか。 

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