2-14 復職

文字数 377文字

それからは鉄工所の職人の職を探していくつもの会社に足を運んだ。

ようやく捜した私の職人としての第一歩は、戦災で焼失を免れた亀戸9丁目にあったS鉄工所である。

今までのレンガ屋、しじみ売り、腰掛けの工場通いとは違い、ようやくちゃんとした会社である。

そこの社長夫妻にも気に入られ入社が決まった。

私の家族を養わなければという心構えもあり、これまでに技術が身についていたので不安はなかった。

S鉄工所も好調で2年後には亀戸1丁目の新工場に移転する事になる。今はそのあたりも賑やかだが、あの頃はまだ原っぱだった。

今の京葉道路にかかる松代橋のそばには日本ドラムの工場と浜田印刷があった。
川向こうの今の墨東病院は、当時は特別な病人の入る病院だった。

周りはこのようだったが、このS鉄工所には20年から24年までの4年間お世話になるのである。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

時は昭和の始め。

貧乏ではあるが東京の下町で活き活きと生きている少年がいた。

名前はのぼると言う。

のぼるが駆け抜けた昭和という時代とはどんなものだったのだろうか。 

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み