3-10 奇跡

文字数 404文字

それは、岡崎の市民病院に入院してから一週間経った日だった。

再び脊髄液を取った医師が小さく、

「アレ・・?」と言った。

検査した脊髄液は、以前の赤茶色だった頃に比べて大分キレイになっているのだった。

それを真横で見ていた私は、

「もしかすると助かるかも知れない。祈りが通じたのだ!」
そう思った。

しかし、日々の状況はそれほど急速には変わらない。

時々起きる妻の痙攣の発作は続いた。まだ、そばにいる私が誰なのかはわからないのだ。

それからは薄紙を剥がす様に、少しずつ快方に向かって行く。

そして、さらに1週間が過ぎたある日の朝だった。

妻が、
「おはよう。」
と病室で徹夜した後で、寝ぼけている私に向かって話しかけたのだった。

溢れる涙が止まらなかった。。。


この病気は助かっても半身不随か、さもなければ死である。
私はそれを覚悟していたが、妻はそれを乗り越えたのだった。
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登場人物紹介

時は昭和の始め。

貧乏ではあるが東京の下町で活き活きと生きている少年がいた。

名前はのぼると言う。

のぼるが駆け抜けた昭和という時代とはどんなものだったのだろうか。 

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