2-16 春ちゃんの団子

文字数 605文字

そんな戦後の混乱の中で 「あまから横丁」通っていた俺は、団子屋の春ちゃんとも仲良くなれた。

ある日、友と2人で20円しか無いのに、春ちゃんの店にいった。団子2皿でさんざん時間をつぶし騒いでいた。ぼちぼち勘定をしようかと、最後の一くしを食べながら話していた時だった。

ちょうど後ろにいた客が勘定なので、
「いくら?」と言った。

「ハイ20円です。」と春ちゃん。

それを聞いて2人共ビックリ。何と客の前にお皿は1枚しかない。

「キット、ちょっと来ない間に値段が上がったんだ!」と2人とも顔を見合わせて、同時に焦る。

2人で様子を見ておいて、春ちゃんがそのお客のおつりを取りに入ったすきに、20円を皿のそばに置いて2人で飛び出した。

しばらくして、今度は多少多目の小使いを懐に入れた日に、この間のお詫びをしようと団子屋に入った。

するとニッコリした春ちゃんがこう言った。
「この間はどうしたの?あれだけ2人共元気が良かったのに、急に帰ったりして。」

「いやあ実は・・」と俺が理由を話す。

「アッハハハ・・。」 と春ちゃん。

つまり結論から言うと、前の客は2皿食べていたのだった。
食べ終わって空いたお皿を春ちゃんが引いていたんだそうだ。

じゃあ、あの時の喉につかえたお団子の味の悪さはなんだったのか?

「チッキショウー!」

春ちゃんのお店への通いは元通りになった事はモチロンである。
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登場人物紹介

時は昭和の始め。

貧乏ではあるが東京の下町で活き活きと生きている少年がいた。

名前はのぼると言う。

のぼるが駆け抜けた昭和という時代とはどんなものだったのだろうか。 

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