第1話 転移

文字数 943文字

 『ふぅ〜ん』のお話の数が60話を越えたので、新たに『さてさて』で投稿します。今後とも、お付き合い宜しくお願い致します。

 前作でダラダラと旅の投稿をしている間に、父の病状は進んだ。2ヶ月ほど前、父の前立腺がんに効く薬は無くなったと投稿したが、あっという間に癌細胞が増えた。

「最近、飯が旨くないんだよ。何か胃につかえるような感じがして、腹が減らん。医者に診てもらった方がいいかのう」

 1ヶ月ほど前、父がそう電話してきた。前立腺がんの薬を飲まなくなって、まだ1ヶ月くらい経った頃だったので、精神的なものから来る食欲不振だと思った。とりあえず

「お腹が減るまで無理に食べなくてもいいんじゃない?今まで、食べ過ぎくらいだったから」

と応えた。ところが2日後『食欲も湧かないし食べようとすると吐きそうになる時がある』と言ったので、かかりつけの医者に診てもらうことになった。処方された薬は漢方薬。父は3日ほど飲んでやめた。

「飲むと気持ち悪くなる。漢方薬は合わんからやめる」

 同居している弟が自分の経験値で『市販薬の整腸剤を飲むと食欲が湧くから飲んでみたら』と勧めた。父は言われるままに数日飲んだ。だが改善しない。また電話があった。

「前立腺がんで紹介状を書いてもらった総合病院の内科にかかりたい」

 とにかく何とかしたい気持ちは伝わったが、連れて行けなかった。運の悪いことに総合病院で院内感染があり、新規の受付をしないと分かったから。また1週間後には前立腺がんの診察日になっていたので、その際に相談してみたらと納得してもらった。

 診察はCT検査、血液・尿検査があった。89歳の父にとって初めてのCT検査。口には出さなかったが、怖がっているのが分かった。それは検査室に入ることなのか、それとも結果を知ることなのか。私は直接聞けなかった。

 診察室に呼ばれCT画像を見ながら

「あー、肝臓に随分転移してるねー。肺にも」

 容赦の無い医師の言葉。母の付き添いで何度となく見たことのある肝臓の画像、そして癌の形。私にもハッキリと分かった。母よりもはるかに多い。その後、食欲のことを相談すると、肝臓に出来た癌の影響だと診断された。父に処方された薬は、西洋薬の吐き気止めと整腸剤だった。

 父のステージが変わった気がしました。





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