第6話 喪中ハガキ

文字数 805文字

 今日から年賀状を投函することが出来ますね。あなたは今年も書きますか?

 私は数日前に宛名もコメントも書き終えた。だが残念なことに書いたうちの1枚を出せなくなった。投函日前日に届いた喪中ハガキ。亡くなったのは、私が宛名にしていた人だった。

 一瞬、頭の中が止まった。思いもよらない知らせすぎて。その人は8月に亡くなっていた。もう何十年も年賀状で繋がっていた会社の先輩。男性なので、お互い暗黙的に会うことはなかった。それでも一度は会いたいと思っていた人。

 去年の年末も同様なことがあった。私が若い頃に習っていたお茶の師匠。母くらいの年齢だったので、早く、一目でも会いたいと思いつつ月日が流れてしまった。前述の人も師匠も前年まで年賀状が届いていたので、私には突然過ぎるお別れだった。

 自分が大病(腎臓がん)を患って生還した時、無性に懐かしい人たちに会いたくなった。それは病が再発して、自分から会いに行けなくなったら後悔すると思ったからだ。つまり相手が先に逝くことは想定外のこと。

 以前に投稿した奈良の旅で再会出来た相手は、まさにもう一度この世で会っておきたい人だった。お茶の師匠が亡くなった時に会いたい人には早く会わなければと教えられたから奈良の人とは再会出来た。今回、喪中ハガキがきた人の年賀状のコメントに初めてメールアドレスを書いた。1年早く書いていれば、会えたかもしれなかったのに……残念でたまらない。

 なぜ、今さら会いたいのか。それは懐かしいだけではなく、青臭かった自分の行動や言動を受け入れてくれて有難うと、改めてお礼が言いたいから。とにかくこの世でキッチリと挨拶したくてしょうがないのだ。たぶん私が当時よりも少し大人になったからだと思う。相手も私もどんどん年老いていく。健康管理もして元気でいなくては。来年は後悔のないように再会をしていきたいから。

 まずは中学の時の担任からかな。私よりも随分年上なので。


 
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