第52話 容体の変化

文字数 912文字

 介護生活は、3週目に入りました。

 1週目にはポータブルトイレに行けた母も3週目には寝たきりになり、介護パンツからの介護オムツへ。体力は確実に落ちている。

 ある日の深夜。私の名を呼ぶ母の声で目が覚めた。急いで部屋に行くと大量の鼻血。ティッシュで抑えていても、ジワーッと滲み出てきて、止まる気配が無い。肝臓癌の影響で血が止まりにくいと分かっていたので、深夜1時を回っていたが、訪問看護師に連絡し、来てもらった。10分ほどで到着。手際良く止血してもらい、止血のコツも教えてもらう。別の日もやはり深夜に来てもらった。次はせん妄。他界した父の名を呼び、身体の痛みに耐えられなくて騒いだ為、来てもらった。看護師は日によって違う。この日は30分ほどで到着。身体をさすったり、声掛けをしたりして落ち着かせてくれた。看護師の到着に差があるのは、自宅から出勤しているからだと言う。つまり前回の人はウチに近いという事。

 食欲は2週間目まで自力で食べる事が出来た。日ごとに食べる量が減り3週目を迎えた月曜日の朝から食欲が無く、食べられなくなった。目を開けるのも辛そうで、1日中うつらうつらとしている。それでも薬は続けるようにと医師から言われていたので、起こして飲ませた。食べられなくなった前夜、母の声がパタリと無くなり、心配になって覗きに言ったら静かな呼吸でスヤスヤと眠っていた。私は連日起こされていたので、容体が悪化していると分かっていても、正直嬉しかった。

 週替わりで母の容体は悪化しているのが分かる。
総合病院の医師に言われた事を思い出した。

「これからは階段のように、一定の状態が続いてガクンと下がり、また一定の状態が続いてガクンと下がっていくと思います」

1週毎に階段は下がり続けている。母も聞いていたはずだが覚えているだろうか?時々、せん妄のような状態が出てきているので

「いつになったら、ベッドから起きる事が出来るのかねぇ。早く治って欲しい」

などと言ったりする。そんな時に私が返すのは

「今は苦しいかもしれないけど、コレを乗り切ったら楽になるから」

嘘ではないけど、本当でもない。

 医師には、アンモニアの影響で意識が混濁していると言われました。
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