第50話 自宅介護

文字数 832文字

 訪問医師への依頼を終えた翌日、訪問看護師の面談に行きました。

 訪問看護師の事務所は、実家から車で15分くらい行った地域包括支援センターの中にあった。看護師ステーションという組織の代表が面談の相手。年齢は私くらいだろうか。まず、何枚かの契約書に同意の上、サイン。書いている手が痛くなるほどの数だった。その後は現在の母の容体や病歴、そして家族構成など順を追って詳細に訊かれた。訪問医師の時にも言われた

『なぜ、同居している弟夫婦が契約に来ないのですか』

の質問は身内の恥をさらけ出さなければならないものだったが正直に話すと

『よくある話です』

と返され拍子抜け。弟夫婦が正当化されたようで嫌な気分になった。とは言え、私ばかりに介護の比重がかからないように訪問看護師を上手く使ってほしいとアドバイスも受けた。訪問看護師の仕事は患者だけではなく、介護に携わる家族のケアもしてもらえるのだと知り、弟夫婦との連携が上手くいかなかったとしても、何とかやっていける気がした。そして最後に

「あなたは持病などはありませんか?」

と訊かれ、それまでサクサクと話していた私は言葉に詰まった。頭の中は少しパニック。片腎で疲れやすい事を話すべきか迷った。が、守秘義務はもちろん私をサポートしてくれる人たちなのだとの思い直し、自分の体調も話した。そして、これは母も知らないと言う事も。少し驚かれたが、私に何かあった時の心づもりをしてもらう為には話して良かったと思っている。

 母が退院してから2週間、ようやく自宅介護及び看取りへのサポート体制が始動した。最初のサービスはヘルパーさんの清拭。退院からお風呂に入れていなかったので、早くやってほしかった事の1つ。でも母には要らぬお世話だったようで

「アタシ、そんなに匂う?今までお風呂に入らなくても、ちゃんと拭いてきたんだから。どうしてもやらにゃいかんの?」

と反発。先が思いやられる始まりになった。

 私は月曜日から金曜日まで実家に寝泊まりする事になりました。



 
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