第41話 メンタル

文字数 929文字

 『骨シンチ』の結果、腕の痛みは癌ではありませんでした。

 では、痛みの原因は何だ?肝臓の担当医が

「とりあえず、痛みは取ってあげるわ」

と言って鎮痛剤を出してくれ、腕は上がらないものの、痛みは多少治った。だが原因を突き止めなければ治療が出来ない。続いてCT検査もしたが分からなかった。整形外科医は首を傾げる。

「首に原因があるかも。来週MRIを撮って、それでも分からなければ、神経内科へ行ってください」

 整形外科医は、お手上げ一歩手前。その流れを弟夫婦に伝えた。それと母の現状も。右手が不自由な母の1日は着替えに1時間、朝昼晩の薬を飲むのにそれぞれ1時間ずつかかっている。

「なるべくAさん(弟嫁)に迷惑かけんように……」

 その心掛けは立派だが、着替えも薬を飲むのも出来ているとは言い難い状態だし、哀れだった。この事実を私が伝えるまで弟夫婦は知らなかった。と言うより弟は気が回らず、弟嫁は触れたくないようだった。私はせめて薬を飲む時の介助くらいは必要だと訴えた。弟は仕事がある。母をサポート出来るのはどう転んでも弟嫁しかいない。彼女はやるとも、やらないとも伝わらない表情で聞いていた。

以前、弟嫁から言われたことを思い出す。

「お義母さんと私の関係を分かってますよね?いろいろ言われても出来ません!」

分かっている。充分過ぎるほど。しばらくして、私は弟嫁に確実な返事を聞きに行った。

「薬の件だけど、やってもらえるかなぁ」

「薬の介助のことを頼まれた時、私、メンタルやられました

はぁ〜?

まさか弟嫁の口からメンタルをやられたなどと言う言葉が出ようとは……

 両親や私はこの何十年と嫁の態度にメンタルをやられ、屈辱を味わって来たと言うのに……
どんな理不尽な態度でも弟はかばい、両親は常に折れてきた。もちろん両親にも少なからず非はあっただろうが、私の目には弟嫁がわがまま、大人気ないと映ることが多かった。私は両親に『弟たちを家から追い出せ』と何度となく進言したが『弟には家を建てるだけの力が無い。だから追い出せない』親心の何物でもない思いを弟は分かっているのか?強くなった嫁に弱った親。弟よ、何も感じないのか?私はただただ悲しい。

 嫌々ながらも何とか嫁にやってもらうことにしました。
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