第34話 救急車

文字数 825文字

 父が退院して2週間が経ちました。

 朝食を終えて時計を見たら、10時。昨夜、父の足の浮腫みについて調べた事を伝えようと母の携帯に電話を入れた。10回ほどコールしたが出ない。こんな事はざらにある。一度切り、ひと呼吸置いて再度コール。3回ほどで

「もしもし……」

弟嫁だった。瞬時に異変を感じ

「おばあちゃん(母)どうかした?」

「今、おじいさんを救急隊の方が運んでくださっています」

 昨晩遅く弟から電話が来た。父の足の浮腫が酷く歩けなくなったので、病院へ連れて行きたいと。父は意識だけはしっかりしているので、拒否しているようだったが、介護する母や弟嫁を気遣う意味もあったに違いない。1人で連れて行くと言ったので咄嗟に止めた。車の乗降、動いている車内での着席、浮腫んだ足に履かせる靴……いずれにおいても難しいと判断したからだ。それでも連れて行くならA(弟嫁)さんと一緒にと頼んだ。その後の予測をいろいろ話し合い、結局、朝の状態を見て判断する事にした。その結果が救急車だった。

 その後、連絡が来たのは12時を少し過ぎていた。以前と同様の階に入院させ、担当医と面談したと伝えてきた。単刀直入に余命を訊いたとも。
医師は

「もう、いつ逝ってもおかしくない状態。生きている事が凄いと思う」と。

 確か、その言葉は私が入院させた3週間ほど前にも聞いた。父の生命力が強いのか、余命を判断するのが難しいのか……いずれにしても、ここ数週間、気が休まらない。ストレスが掛かりっぱなしなので、数日前に夫とドライブしたが(この事実も以前の私たちからしたら摩訶不思議ではあるが)効果を感じない。外にも出られない母のストレスはいかほどか?

 意識はハッキリしている。前回のように退院してきたら……弟は決めていた。

『退院してきたら、次は施設に入ってもらう』

反対する余地はない。仮に弟嫁が介護に積極的であったとしても、重篤の両親2人を看ることなんて出来ない。

 入院して3日目。まだ父は生きています。
 









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