第40話 一難去って……

文字数 803文字

 父を送って数日。母からヘルプがきました。

 「右手が痛くてぜんぜん使えんの。明日Aさん(弟嫁)に整形へ連れていってもらうことにしたわ」

 母曰く、父が亡くなる直前の日々に、父の腕を取って起こしてあげていたのが原因らしい。父は亡くなる直前まで意識がハッキリしていたから、朝になると自力で起きられなくても母に手伝ってもらって起きていた。寝ながら両手を前に上げて「引っ張ってくれ」と母に頼んだ。私も一度、言われるがままに手を差し伸べたが、今思えば正しい起こし方ではない。だが咄嗟に手をつかんでいた。自分が冷静ではなかったと思い出す。

 右手に力が入らなくなった母は、何をやるにも時間がかかるようになった。数日様子を見ていたが、全く治る気配がないので嫁に相談したら

「もう少し様子を見たら?」

と最初は取り合ってくれなかったらしい。まあ、何かと心配性の母だから大したことはないと思われていたようだ。はたしてそれだけの理由だったのか?日頃から嫁に対する愚痴を聞かされる私は、ついつい余計な詮索をしてしまう。
とは言え、何とか病院にまで漕ぎつけた診察結果は

総合病院で再検査の必要有り

 肝臓癌の担当医宛に紹介状が出されるいう予想をはるかに上回るものだった。整形外科なのに内科の医師宛?意味が分からなかった。分かったことは、私が付き添わなければならないということ。肝臓癌の診察だけでも、半日以上かかるのに整形外科が加われば言わずもがな。翌週の総合病院の診察で紹介状の内容を医師から伝えられた。

『癌の転移を疑う』

 血液検査でも腫瘍マーカーがかなり上がっていたので、急遽翌日に『骨シンチ』の検査を入れてもらうことになった。私も自身が癌の時にやった検査だったので、医師からは「よく知っているね」と驚かれたが、私の病歴のことなど話せるわけもなく、ただの雑学と思われたようだった。

 思いがけない検査の日程で、実家に3連泊することになりました。





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