第48話 勝手な解釈 ①

文字数 918文字

 長年の疑問がやっと解けました。

 母の口癖にこういうのがある。

「Aさん(弟嫁)に一度どういう事なのか訊きたい」

 弟が結婚して30年。最初から両親と同居。弟たちは2階、両親は1階の部屋を使い台所と浴室は共同。だが、その生活はわずか2年余り、弟嫁が母を嫌う事で破綻。思えば、その時に別居すべきだった。詳しくは分からないが、結局、2階に台所を作る事で別居は回避され、今に至る。それでも玄関は1つ。世間から見れば立派な同居だ。

 台所が出来たのを皮切りに、嫁は母と距離を置くようになった。その時から両親と嫁の間に溝ができ、私は帰省する度に嫁に対する愚痴を母から聞かされた。やがて私も幼子を連れて帰省する頃になり、弟の子供たちと遊ばせる機会が増えた。だが嫁からは疎まれていたと思う。

 今でも忘れられないのは、弟の子が上の子を露骨に仲間外れにした事だ。下の子は小さかったので可愛がられたが、上の子には無視。私はその子に嫌悪感を抱き、嫁は(いさ)める事もなかった。それがきっかけで上の子はいとこと距離を置いた。母に対する嫁の嫌悪感が私にも及んだと思えた。

 やがて両親が老いてきて手助けが必要になった頃、嫁はなんだかんだと理由を付けては両親の頼みを断った。結局、両親の雑事は病院の付き添いを兼ねて帰省している私の仕事になった。それが当たり前のように両親は私に頼るし、弟嫁は無関心を装っていった。

 総合病院の通院最終日の夜。母が突然怒り出した。

「アタシは悔しい。どうしてAさんは喋ってくれんのか直接訊きたい!」

またか……過去に何度か見た光景。それでも今は死の淵だ(本人の自覚は薄いが)最後の願いと捉え、2階に居る弟夫婦を呼んだ。

「母親が言いたい事があるって!ほら、2人が来たよ」

「……」母は、しどろもどろ。

結局、嫁に何も言えなかった。そればかりか私が援護射撃をしたために、弟たちはここぞとばかり、自分たちを正当化した。それに伴い母は号泣。子供のように『わーわー』と泣いた。寿命が尽きそうな人にこの扱い。付き合いきれん。私は同居人じゃない。それなのに帰省の度に母の弟の嫁の問題にいつも巻き込まれ、悪者になる。

 母の介護の終わりを、私の帰省の終わりにするつもりです。
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