第27話 それぞれの感情 ①

文字数 830文字

 WBCの決勝、見ましたか?私はセレモニーからテレビに釘付けでした。

 W杯の時もテレビにかじりついていた私。サッカーも野球も普段は観ない。だが世界を股にかけるような大会は、なぜか興味をそそられ、愛国主義というわけでもないのに、日本の選手を愛おしく思い、ついつい観てしまう。

 それにしても大谷選手、持ちすぎ。自分の出塁からゲームの流れが変わり、最後は守備で三振で、カッコ良すぎるではないか。普段は道具の扱いも丁寧なことは周知の事実。だが優勝が決まった瞬間、帽子を投げ捨て、グローブを飛ばして、雄叫び。彼は自分の見られ方を知っている。それは意識的ではなく、潜在的に自然な形で見えるように。年頃の子どもを持つ私は、ふと思った。

『彼はどんな女性を選ぶんだろう……』

すかさずググる。『大谷翔平、彼女』

 過去に噂された人はいたようだが、今は名前が上がっていない。私が見たサイトには『女子アナ嫌い。芦田愛菜ちゃんがタイプだと言っていたことも』とあった。イチローさんを思い出す。彼も大リーグで一世風靡した人。大谷選手と比べ少しクセが強いから(ごめんなさい)どんなお相手かと思いきや……時代の流れもあったのか?女子アナだった。私が思うに、大谷選手はイチローさんを越えている。今や世界的なスーパースターの彼女ともなれば、祝福ばかりではないだろう。プライベートでのカッコ良さがどう出るか。楽しみの1つになった。

 テレビでは、メダルの授与が流れていた。サラッと栗山監督がメダルをかけてもらい、選手が続々と続き、トリはやはり大谷選手。トロフィーを受け取り、MVPの盾を貰う姿を見て怖くなった。

『美味しい所を全部持ってっちゃって、大丈夫?』

 谷が多めの人生を歩んできた私の独り言。インタビューではなく、彼の胸の内を知りたいものだ。

 いろいろなことを思い巡らしていた時に携帯電話が鳴った。相手は父。

「もう、限界やと思う。明日入院したいから、来てくれんか」

 私の心は一気に現実に戻されました。



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