第18話 リリ・ミシア・ナミ
文字数 1,215文字
しかし、少年王ミラノ・レム・シエルクーンはアラタを一瞥した後、再び前に向き直りもう振り返ることは無かった。
ゾンダーク神殿にいた信徒達が、もぞもぞ、もぞもぞと動き〈ダトゥル=ザ・オ・ゾンダーク〉の偶像の前に集まっていく。
そして彼らは忽然と、低い声音で何か斉唱し始めた。
「エィィィヤィィィィィィィィィア、イィィィィィィィィィィィィ
スァァァャャ+ァァァャャャィ、エィィィャャ+ィィィャャャアー
セィィ+ャャャィィィヮヮ+ア、シァァ+ャャャァァァヮヮ+ィ」
なんとも言えぬ奇怪な声だった。
聞く者によっては、滑稽な声だと感じるかもしれない。
彼らの発する声は重なり合い、空気は震え共鳴し神殿の壁がカタカタと音を立てた。
「ユァァァャャャァァァヮヮ+ィ、セィィィャャャィィィヮヮ+アー
エィィ+yャャィィィ+ャャアー、イァァ+ャャyァァァ+*ャィ
スァァァ*ャャaァァ+*ャャィ、エィィィ*ャャィィィ+*ャャaーaー」
土俗的でもあり、非人間的な何かであるようにも感じられる音。
ところどころ人間には聴き取れぬ音も混じっていた。
彼らはその奇妙な声を発し続ける。
すると、偶像と思われた彫像から触手が伸び、リリ・ミシア・ナミの体に巻き付いていった。
それは、異界の神〈ダトゥル=ザ・オ・ゾンダーク〉の触手である。
触手が伸びると同時に、辺りに甘い香りが立ち込めた。
マルコ・デル・デソートは、ほんの少し近寄り「ああ、あああああ!」と声を出した。
不快な見てくれの触手であった。
触手はリリ・ミシア・ナミに巻き付き、いままさに、彼女の体の奥まで入り込もうとしている。
そのとき、「やめて」と小さな声を出したのは、女神〈ブシン・ルナ・フォウセンヒメ〉であった。
女神は一瞬にリリの真横まで移動し、〈ダトゥル=ザ・オ・ゾンダーク〉の触手を断ち切らんとする。
しかし、少年王ミラノがそれを制した。
「フォウセンヒメよ、邪魔だては無用だ」
「無用とは? シエルクーン王、いつから神に物申せるようになったのだ?」
「無用だ、リリ・ミシア・ナミはあなたの母親とは違う」
少年王はそう言う。『あなたの母親とは違う』その言葉がフォウセンヒメの中で木霊する。
彼女の心の中で、何かが弾けそうになる寸前にリリの体が発光した。
リリ・ミシア・ナミが光を放つ。
すると、〈ダトゥル=ザ・オ・ゾンダーク〉は触手を伸ばすのを止めた。
そして不思議なことに、スルスルと、その触手を引っ込めたのである。
異界の神は、いつのまにか元の彫像に戻っていた。
神殿の奥にいたゾンダークの司祭が、溜息を洩らした。
「ああ神よ、リリ・ミシア・ナミもゾンダークの聖女でないと言うのか!」
「ゾンダークの司祭よ、そのようだな。
リリ・ミシア・ナミは僕が貰っていく」
少年王ミラノが言った。
ゾンダーク神殿にいた信徒達が、もぞもぞ、もぞもぞと動き〈ダトゥル=ザ・オ・ゾンダーク〉の偶像の前に集まっていく。
そして彼らは忽然と、低い声音で何か斉唱し始めた。
「エィィィヤィィィィィィィィィア、イィィィィィィィィィィィィ
スァァァャャ+ァァァャャャィ、エィィィャャ+ィィィャャャアー
セィィ+ャャャィィィヮヮ+ア、シァァ+ャャャァァァヮヮ+ィ」
なんとも言えぬ奇怪な声だった。
聞く者によっては、滑稽な声だと感じるかもしれない。
彼らの発する声は重なり合い、空気は震え共鳴し神殿の壁がカタカタと音を立てた。
「ユァァァャャャァァァヮヮ+ィ、セィィィャャャィィィヮヮ+アー
エィィ+yャャィィィ+ャャアー、イァァ+ャャyァァァ+*ャィ
スァァァ*ャャaァァ+*ャャィ、エィィィ*ャャィィィ+*ャャaーaー」
土俗的でもあり、非人間的な何かであるようにも感じられる音。
ところどころ人間には聴き取れぬ音も混じっていた。
彼らはその奇妙な声を発し続ける。
すると、偶像と思われた彫像から触手が伸び、リリ・ミシア・ナミの体に巻き付いていった。
それは、異界の神〈ダトゥル=ザ・オ・ゾンダーク〉の触手である。
触手が伸びると同時に、辺りに甘い香りが立ち込めた。
マルコ・デル・デソートは、ほんの少し近寄り「ああ、あああああ!」と声を出した。
不快な見てくれの触手であった。
触手はリリ・ミシア・ナミに巻き付き、いままさに、彼女の体の奥まで入り込もうとしている。
そのとき、「やめて」と小さな声を出したのは、女神〈ブシン・ルナ・フォウセンヒメ〉であった。
女神は一瞬にリリの真横まで移動し、〈ダトゥル=ザ・オ・ゾンダーク〉の触手を断ち切らんとする。
しかし、少年王ミラノがそれを制した。
「フォウセンヒメよ、邪魔だては無用だ」
「無用とは? シエルクーン王、いつから神に物申せるようになったのだ?」
「無用だ、リリ・ミシア・ナミはあなたの母親とは違う」
少年王はそう言う。『あなたの母親とは違う』その言葉がフォウセンヒメの中で木霊する。
彼女の心の中で、何かが弾けそうになる寸前にリリの体が発光した。
リリ・ミシア・ナミが光を放つ。
すると、〈ダトゥル=ザ・オ・ゾンダーク〉は触手を伸ばすのを止めた。
そして不思議なことに、スルスルと、その触手を引っ込めたのである。
異界の神は、いつのまにか元の彫像に戻っていた。
神殿の奥にいたゾンダークの司祭が、溜息を洩らした。
「ああ神よ、リリ・ミシア・ナミもゾンダークの聖女でないと言うのか!」
「ゾンダークの司祭よ、そのようだな。
リリ・ミシア・ナミは僕が貰っていく」
少年王ミラノが言った。