第25話 少年王の異母兄弟
文字数 1,588文字
巨大ダーク・フロッグを倒したことで町中から歓声があがる。
武器屋の親父が「さすが親分の親分ですね」とアラタを褒めた。
次々と押し寄せてきたダーク・フロッグも、とまった。
『王による貧民窟の掃討作戦』をなんとかくい止めることができたようである。
良かった、良かったと思っていたら、この国、シエルクーン魔導王国・王宮からアラタ宛に出頭命令がきた。
というか、アラタは王国兵士にそのまま連れていかれてしまった。
アラタは「離せ!」とわめいてジタバタしたが、国王の前まで連れていかれ魔導捕縛された。
捕縛され動くこともできない。
王座の横にうやうやしく立っている男に「国王陛下」と呼ばれた人間、その王座に座っていた男はアラタより幼い少年であった。
こんな子供だったんだ。
子供?
あれ、国王って僕の父親のはずなんだけど、とアラタは思う。
少年は「はじめまして、お兄様」と言った。
「お兄様? どういう意味だ!」
「お兄様でしょう? 僕らは異母兄弟ですから」
「異母兄弟?」
「母親の違う兄弟という意味ですよ、お兄様」
「お前に兄様呼ばわりされる筋合いはない!」
異母兄弟?
アラタの左胸にある『紋章の入墨』はシエルクーン魔導王国の王によりつけられた印 だ。
自分の子供であるという証のための印 である。
「王はどうした?」
「お父様のことですか? 死にましたよ。
あれ? ご存知なかったですか?
今は僕がシエルクーンの王ですよ」
少年は不思議そうな顔をする。
「それはそうと、僕は貧民窟を綺麗にしようと思ったのですが」
「綺麗に? お前のしたことはモンスターを差し向けたことじゃないか!」
「お兄様、僕は国王ですよ。少し口のきき方を気を付けてくださいね」
そこへ突然、女神、ブシン・ルナ・フォウセンヒメが現れる。
「おや、フォウセンヒメ殿、突然にいかがかされましたか?」
「(いかがもしていないが、お前こそいかがしたのだ?)」
「僕もいかがもしていませんよ」
少年王は、不敵な笑みを浮かべて女神に言う。
「(あの少年、邪神に繋 がっておるようだが)」
女神はアラタの方を向くと、そう言った。
「邪神?」
「(異界の神だ。俺があの者を追い払ってやろうぞ)」
女神、ブシン・ルナ・フォウセンヒメがそう言うと、空間が闇と化した。
闇と化した空間に、アラタと女神様と少年王と醜い姿をしたモノがいた。
「あの、女神様、急に真っ暗になったのですが......それとあの触手がたくさん生えた気持ち悪いモノは何ですか?」
「(あれが邪神だ。お前は黙っておれ)」
少年王に複数の細い糸が繋がっていた。
細い糸は邪神の触手から真っ直ぐに伸びている。
(あ、ほんとに繋がってる。
きっとあの細い糸でこの少年は邪神にあやつられているんだ)
フォウセンヒメは「剣よ現れよ」と言うと、瞬時に現れたその剣で、細い糸を一気にすべて断ち切った。
女神様は邪神に剣を向ける。
「(異界の神よ我と戦うか?)」
「(■■■■■■)」
邪神は奇怪な声をあげ、消失した。
「いなくなっちゃった。逃げちゃったの?」
「(逃げたのかどうかは知らぬ。とりあえずここからはいなくなった)」
「逃げちゃったんだよ。女神様に恐れをなして」
気づくと闇となっていた空間は元に戻っている。
少年王は倒れており、近衛兵たちが駆け寄ってきた。
「お前、国王陛下に何をした?」
「な、何もしてないです! 何もしてないです!」
やがて少年王は立ち上がり、口を開いた。
「おにいさま? ぼくのおにいさま? ぼくのおにいさまですよね?」
少年王はまるで幼子 のような声で言った。
武器屋の親父が「さすが親分の親分ですね」とアラタを褒めた。
次々と押し寄せてきたダーク・フロッグも、とまった。
『王による貧民窟の掃討作戦』をなんとかくい止めることができたようである。
良かった、良かったと思っていたら、この国、シエルクーン魔導王国・王宮からアラタ宛に出頭命令がきた。
というか、アラタは王国兵士にそのまま連れていかれてしまった。
アラタは「離せ!」とわめいてジタバタしたが、国王の前まで連れていかれ魔導捕縛された。
捕縛され動くこともできない。
王座の横にうやうやしく立っている男に「国王陛下」と呼ばれた人間、その王座に座っていた男はアラタより幼い少年であった。
こんな子供だったんだ。
子供?
あれ、国王って僕の父親のはずなんだけど、とアラタは思う。
少年は「はじめまして、お兄様」と言った。
「お兄様? どういう意味だ!」
「お兄様でしょう? 僕らは異母兄弟ですから」
「異母兄弟?」
「母親の違う兄弟という意味ですよ、お兄様」
「お前に兄様呼ばわりされる筋合いはない!」
異母兄弟?
アラタの左胸にある『紋章の入墨』はシエルクーン魔導王国の王によりつけられた
自分の子供であるという証のための
「王はどうした?」
「お父様のことですか? 死にましたよ。
あれ? ご存知なかったですか?
今は僕がシエルクーンの王ですよ」
少年は不思議そうな顔をする。
「それはそうと、僕は貧民窟を綺麗にしようと思ったのですが」
「綺麗に? お前のしたことはモンスターを差し向けたことじゃないか!」
「お兄様、僕は国王ですよ。少し口のきき方を気を付けてくださいね」
そこへ突然、女神、ブシン・ルナ・フォウセンヒメが現れる。
「おや、フォウセンヒメ殿、突然にいかがかされましたか?」
「(いかがもしていないが、お前こそいかがしたのだ?)」
「僕もいかがもしていませんよ」
少年王は、不敵な笑みを浮かべて女神に言う。
「(あの少年、邪神に
女神はアラタの方を向くと、そう言った。
「邪神?」
「(異界の神だ。俺があの者を追い払ってやろうぞ)」
女神、ブシン・ルナ・フォウセンヒメがそう言うと、空間が闇と化した。
闇と化した空間に、アラタと女神様と少年王と醜い姿をしたモノがいた。
「あの、女神様、急に真っ暗になったのですが......それとあの触手がたくさん生えた気持ち悪いモノは何ですか?」
「(あれが邪神だ。お前は黙っておれ)」
少年王に複数の細い糸が繋がっていた。
細い糸は邪神の触手から真っ直ぐに伸びている。
(あ、ほんとに繋がってる。
きっとあの細い糸でこの少年は邪神にあやつられているんだ)
フォウセンヒメは「剣よ現れよ」と言うと、瞬時に現れたその剣で、細い糸を一気にすべて断ち切った。
女神様は邪神に剣を向ける。
「(異界の神よ我と戦うか?)」
「(■■■■■■)」
邪神は奇怪な声をあげ、消失した。
「いなくなっちゃった。逃げちゃったの?」
「(逃げたのかどうかは知らぬ。とりあえずここからはいなくなった)」
「逃げちゃったんだよ。女神様に恐れをなして」
気づくと闇となっていた空間は元に戻っている。
少年王は倒れており、近衛兵たちが駆け寄ってきた。
「お前、国王陛下に何をした?」
「な、何もしてないです! 何もしてないです!」
やがて少年王は立ち上がり、口を開いた。
「おにいさま? ぼくのおにいさま? ぼくのおにいさまですよね?」
少年王はまるで