第3話 優秀な魔導士
文字数 1,499文字
冒険者養成所の屋内は真っ昼間だというのに薄暗かった。
外は晴天だというのにだ。
ミラノとノリスは、ウキグモ・ジョサ・レイクが使用していた部屋に入っていった。
彼が使用していた剣が、まだそのままそこに置かれていた。
ウキグモが自死したとき、その剣は異界の魔導の匂い、甘い香りをもうもうと発していた。
今はもうその匂いは消えていた。
剣には白魔導で処置がされているようだ。
ヒヨコの姿をしたマーマ・マリアは、剣の回りを飛び回っていた。
マーマ・マリアは、いったい何をしているのだろう? ミラノは不思議に思った。
それにどうしてこの剣から異界の魔導の香りが発せられていたのだろうか?
特に何の変哲もない剣であるが。
ミラノはその剣を手にとってみた。
少年にとってはやや重く感じられる剣であった。
剣の中でドロリと何かが動いたような気配があった。
いや、確かに何かが動いている、生理的な嫌悪感をもよおさせるようなヌラりヌラりとした動きだ。
異界の魔導の香りが発せられていたならば、その動いたものは当然、異界のモノであろう。
宦官・ノリスは「うーん、気持ちの悪い剣ですねえ」と言った。
薄暗い室内でかすかに銀色に光る剣。
ミラノ・レム・シエルクーンは、その剣を魔導を施した布に厳重に包んだ。
マーマ・マリアは、ミラノを見たが何も言わずにその場から消えていった。
本来であれば、何か伝えても良いだろう場面であったかもしれないが、彼女は不要と思ったのだろう。
マーマ・マリアにとっても、シエルクーン魔導王国は特別な場所であり、その国王は特別な存在なのではあるが。
ミラノはウキグモの剣を回収すると、外に出た。
よく晴れた日である。
薄暗がりの部屋から急に外に出たから、ミラノは少し眩暈がした。
「この養成所の責任者は誰であろうか?」
ミラノはマルコに聞いた。
「責任者……責任者はアラタ・アル・シエルナという者なんですが、
いちおう、この辺りの自治会長なんですけど、
あいつ自治会長のくせに何もしてなくて、親方が死んでからずっと部屋に引きこもってるし」
念のため訂正しておくが、自治会長ではなく自治領主である。
「引きこもってるの?」
「うん。まあ、親方はあいつにとっては本当の親みたいなもんだったろうから、気持ちは分かるけどさ」
「アラタに用があるなら、部屋から引きずり出してくるよ!」
「いえ、別にいいんです。
アラタさんには、別の日に会いにいきますから。
ところでこの剣に魔導の処置をしたのは誰ですか?」
ミラノは布に包んだ剣を見せた。
「それは親方の剣? 魔導をかけたのは俺だけど?」
少年王は不可解に思った。
その魔導の処置で、異界のモノがこの剣から出られないようにしてあるのだ。
それ程の強力な処置を、この目の前にいる、髪のボサボサな少年がやったというのか?
いや、それ程の処置ができる者が、僕のことを知らないなんてことあるのか? と彼は思ったのである。
「お前は誰だ?」
ミラノはややキツめな口調で聞いた。
「お、お、お、俺はマルコです。マルコ・デル・デソートです」
「名前を聞いているのではない! いったい何者だ!」
「い、い、いや、あの、何者と言われても困るんですが……。」
マルコ・デル・デソートは単に天然な性格をしている。
自分が優秀な魔導士だという自覚はあるものの、自分がその剣にかけた魔導がそれ程のものと思っていないし、目の前の少年が国王であることに気づいてもいない。
外は晴天だというのにだ。
ミラノとノリスは、ウキグモ・ジョサ・レイクが使用していた部屋に入っていった。
彼が使用していた剣が、まだそのままそこに置かれていた。
ウキグモが自死したとき、その剣は異界の魔導の匂い、甘い香りをもうもうと発していた。
今はもうその匂いは消えていた。
剣には白魔導で処置がされているようだ。
ヒヨコの姿をしたマーマ・マリアは、剣の回りを飛び回っていた。
マーマ・マリアは、いったい何をしているのだろう? ミラノは不思議に思った。
それにどうしてこの剣から異界の魔導の香りが発せられていたのだろうか?
特に何の変哲もない剣であるが。
ミラノはその剣を手にとってみた。
少年にとってはやや重く感じられる剣であった。
剣の中でドロリと何かが動いたような気配があった。
いや、確かに何かが動いている、生理的な嫌悪感をもよおさせるようなヌラりヌラりとした動きだ。
異界の魔導の香りが発せられていたならば、その動いたものは当然、異界のモノであろう。
宦官・ノリスは「うーん、気持ちの悪い剣ですねえ」と言った。
薄暗い室内でかすかに銀色に光る剣。
ミラノ・レム・シエルクーンは、その剣を魔導を施した布に厳重に包んだ。
マーマ・マリアは、ミラノを見たが何も言わずにその場から消えていった。
本来であれば、何か伝えても良いだろう場面であったかもしれないが、彼女は不要と思ったのだろう。
マーマ・マリアにとっても、シエルクーン魔導王国は特別な場所であり、その国王は特別な存在なのではあるが。
ミラノはウキグモの剣を回収すると、外に出た。
よく晴れた日である。
薄暗がりの部屋から急に外に出たから、ミラノは少し眩暈がした。
「この養成所の責任者は誰であろうか?」
ミラノはマルコに聞いた。
「責任者……責任者はアラタ・アル・シエルナという者なんですが、
いちおう、この辺りの自治会長なんですけど、
あいつ自治会長のくせに何もしてなくて、親方が死んでからずっと部屋に引きこもってるし」
念のため訂正しておくが、自治会長ではなく自治領主である。
「引きこもってるの?」
「うん。まあ、親方はあいつにとっては本当の親みたいなもんだったろうから、気持ちは分かるけどさ」
「アラタに用があるなら、部屋から引きずり出してくるよ!」
「いえ、別にいいんです。
アラタさんには、別の日に会いにいきますから。
ところでこの剣に魔導の処置をしたのは誰ですか?」
ミラノは布に包んだ剣を見せた。
「それは親方の剣? 魔導をかけたのは俺だけど?」
少年王は不可解に思った。
その魔導の処置で、異界のモノがこの剣から出られないようにしてあるのだ。
それ程の強力な処置を、この目の前にいる、髪のボサボサな少年がやったというのか?
いや、それ程の処置ができる者が、僕のことを知らないなんてことあるのか? と彼は思ったのである。
「お前は誰だ?」
ミラノはややキツめな口調で聞いた。
「お、お、お、俺はマルコです。マルコ・デル・デソートです」
「名前を聞いているのではない! いったい何者だ!」
「い、い、いや、あの、何者と言われても困るんですが……。」
マルコ・デル・デソートは単に天然な性格をしている。
自分が優秀な魔導士だという自覚はあるものの、自分がその剣にかけた魔導がそれ程のものと思っていないし、目の前の少年が国王であることに気づいてもいない。