第12話 小さな縦笛と飛空術
文字数 1,731文字
試してみると、アラタとマルコは篳篥 という小さな縦笛 の音を出すことはできなかった。
しかし、ベアーはものすごい肺活量なのか吹いてみるとプオーという音が出た。
「ベアーさん、すごい!」
「初めての方で、音を出すことが出来るのはなかなかすごいです」
魔導書の精・白梅もベアー・サンジ・ドルザを褒めた。
「笛は音をだせやしたが、あっしは〔飛空術〕はてんでダメなんでやんす」
ベアーはそう言ったが、Aランク冒険者だというのに飛空術ができないなんてことあるのだろうか。
アラタは少し不可解に思った。
熟練の冒険者にとっては、飛空術はさほど難しいものでもないだろう。
「ベアーさん、〔飛空術〕できないの?」
「そうなんでやんす。〔飛空術〕だけはできないんでやんす」
ベアーはそう言って、頭をかいた。
確かに飛空術というのはとても集中力を必要とする技術なのではあるが。
ともかく、アラタとマルコは笛が吹けず、ベアーは笛は吹けたが飛空術ができないという状態だ。
マルコは飛空術は三十分くらいがやっとだと言う。
それでも、熟練度を必要とする飛空術を三十分続けられることは、彼くらいの年齢の冒険者にとってはまあまあすごいことだ。
アラタは何時間でもできるのだが。
「マルコ先輩、三十分もできるのはすごいです」
「アラタ君、それはイヤミかね?」
マルコはそう言いながらも、アラタが何時間でもできることについてスゴいことだと言った。
そして、しかし今日はもう遅いので、笛と飛空術の練習は明日からすることにした。
***
翌朝になり、彼らは冒険者ギルドの中庭に集まり、さっそく練習を始める。
やはり、アラタとマルコは吹けども笛から音がでない。
ベアーはプオーと音を出しているが、飛空術についてはすっかり無理だと決め込んで諦めてしまっている。
そうこうしていたら、教育係のスライムさんがやってきて、「何を遊んでいるっスか? 受付係の仕事をするっス!」と言った。
そうだった。仕事があるんだった。アラタはいたしかたなく、受付係の仕事へと向かった。
中庭で二人が一生懸命に特訓しているのが見える。
魔導書の精・白梅も一生懸命応援している。
「マルコさん、頑張って!」
「うん、白梅ちゃん、俺、頑張る!!」
「マルコさん、頑張って!」
「うん、俺、頑張る!!」
マルコ・デル・デソートは、白梅に応援され頑張っている。
はたから見たら、猫とたわむれる小太りの男の子であるので、朝になりギルドにやってきた屈強な冒険者たちは、滑稽なものを見る目つきだったり、あるいは微笑ましいものを見る目つきで彼らを見ていた。
まあ、マルコが猫好きなのは確かなことなのだろう。
白梅の応援に奮起したのか、マルコの笛からブーという音が出た。
お世辞にも綺麗な音とは言えなかったのではあるが。
「マルコさん、すごいです!」
「白梅ちゃん、俺、やったよ!!」
マルコは、白梅に褒められてすごい嬉しそうにしている。
アラタはマルコはよほど猫が好きなんだろうなと思った。
いや、実際には猫のような生き物に見える【魔導書の精】と呼ばれる何かなのであるが。
しかしアラタは、褒められて嬉しがっているマルコのそのごく素直な性格が羨ましくも思った。
「マルコ坊ちゃん、音を出せましたでやんすね」
「はい。あとは〔飛空術〕一時間です!! アラタに出来るんだから、俺だって出来るはずだ!」
(うん、マルコ先輩ならきっと出来ますよ)
「(何だ、あの者達は〔飛空術〕もまともに出来ぬのか?)」
「あ、女神さん、でもマルコ先輩は三十分くらいはできますし」
「(三十分程度で何だというのか、仕方ない俺が直々に指導してやろう)」
ブシン・ルナ・フォウセンヒメは二人の方へいき、彼らを指さした。
すると二人は宙に浮かび、体をバタバタとさせた。
女神様は二人をしばらくそのままにしておく。
「ひえ~」とか「ふひ~」とかいう彼らの叫び声が聞こえてくるのだが......
大丈夫だろうか? アラタは心配した。
しかし、ベアーはものすごい肺活量なのか吹いてみるとプオーという音が出た。
「ベアーさん、すごい!」
「初めての方で、音を出すことが出来るのはなかなかすごいです」
魔導書の精・白梅もベアー・サンジ・ドルザを褒めた。
「笛は音をだせやしたが、あっしは〔飛空術〕はてんでダメなんでやんす」
ベアーはそう言ったが、Aランク冒険者だというのに飛空術ができないなんてことあるのだろうか。
アラタは少し不可解に思った。
熟練の冒険者にとっては、飛空術はさほど難しいものでもないだろう。
「ベアーさん、〔飛空術〕できないの?」
「そうなんでやんす。〔飛空術〕だけはできないんでやんす」
ベアーはそう言って、頭をかいた。
確かに飛空術というのはとても集中力を必要とする技術なのではあるが。
ともかく、アラタとマルコは笛が吹けず、ベアーは笛は吹けたが飛空術ができないという状態だ。
マルコは飛空術は三十分くらいがやっとだと言う。
それでも、熟練度を必要とする飛空術を三十分続けられることは、彼くらいの年齢の冒険者にとってはまあまあすごいことだ。
アラタは何時間でもできるのだが。
「マルコ先輩、三十分もできるのはすごいです」
「アラタ君、それはイヤミかね?」
マルコはそう言いながらも、アラタが何時間でもできることについてスゴいことだと言った。
そして、しかし今日はもう遅いので、笛と飛空術の練習は明日からすることにした。
***
翌朝になり、彼らは冒険者ギルドの中庭に集まり、さっそく練習を始める。
やはり、アラタとマルコは吹けども笛から音がでない。
ベアーはプオーと音を出しているが、飛空術についてはすっかり無理だと決め込んで諦めてしまっている。
そうこうしていたら、教育係のスライムさんがやってきて、「何を遊んでいるっスか? 受付係の仕事をするっス!」と言った。
そうだった。仕事があるんだった。アラタはいたしかたなく、受付係の仕事へと向かった。
中庭で二人が一生懸命に特訓しているのが見える。
魔導書の精・白梅も一生懸命応援している。
「マルコさん、頑張って!」
「うん、白梅ちゃん、俺、頑張る!!」
「マルコさん、頑張って!」
「うん、俺、頑張る!!」
マルコ・デル・デソートは、白梅に応援され頑張っている。
はたから見たら、猫とたわむれる小太りの男の子であるので、朝になりギルドにやってきた屈強な冒険者たちは、滑稽なものを見る目つきだったり、あるいは微笑ましいものを見る目つきで彼らを見ていた。
まあ、マルコが猫好きなのは確かなことなのだろう。
白梅の応援に奮起したのか、マルコの笛からブーという音が出た。
お世辞にも綺麗な音とは言えなかったのではあるが。
「マルコさん、すごいです!」
「白梅ちゃん、俺、やったよ!!」
マルコは、白梅に褒められてすごい嬉しそうにしている。
アラタはマルコはよほど猫が好きなんだろうなと思った。
いや、実際には猫のような生き物に見える【魔導書の精】と呼ばれる何かなのであるが。
しかしアラタは、褒められて嬉しがっているマルコのそのごく素直な性格が羨ましくも思った。
「マルコ坊ちゃん、音を出せましたでやんすね」
「はい。あとは〔飛空術〕一時間です!! アラタに出来るんだから、俺だって出来るはずだ!」
(うん、マルコ先輩ならきっと出来ますよ)
「(何だ、あの者達は〔飛空術〕もまともに出来ぬのか?)」
「あ、女神さん、でもマルコ先輩は三十分くらいはできますし」
「(三十分程度で何だというのか、仕方ない俺が直々に指導してやろう)」
ブシン・ルナ・フォウセンヒメは二人の方へいき、彼らを指さした。
すると二人は宙に浮かび、体をバタバタとさせた。
女神様は二人をしばらくそのままにしておく。
「ひえ~」とか「ふひ~」とかいう彼らの叫び声が聞こえてくるのだが......
大丈夫だろうか? アラタは心配した。