第1話 旅の冒険者
文字数 1,409文字
16歳という年齢は少年というほどには子供ではないし、青年というほどには大人でもない。そんな年頃だろう。
ナユタ・エルリカ・アルは16歳であった。
彼は旅をしていた。一人でではない。相棒がいた。
相棒の名はドラゴである。トラ柄の猫の姿をしている。魔導書の精だ。
「なあトラコ、腹減ったなあ」
「オレの名はドラゴだ! 何回言えばわかるんだ?」
「ああ、ドラゴねドラゴ。それより腹減ったよ」
古い魔導書には『魔導書の精』と呼ばれるものが宿ることがあるという。
ナユタは彼の家、アル家に伝わる魔導書を持っている。
その魔導書に宿っていたのがドラゴであり、ドラゴはアル家の当主に代々仕える魔導書の精である。
念のためもう一回書いておくが、ドラゴの姿はトラ柄の猫である。ちなみにオスである。
「腹が減った? 知らんわ。魔導書の精は腹を空かしたりしないからな」
「盗むか? 食い物盗むしかないな! そうだ盗もう」
「ナユタの旦那よう、盗みはよくないだろ」
魔導書の精・ドラゴはあきれた顔をしてみせた。
まったくもって仕方のない奴だと言いたげである。
「じゃあ、どうしろって言うんだ」
「その辺の雑草でも食ってろ」
「そうだな。そうするよ」
そう言ってナユタは草むらへ行き名も知れぬ草を食べ始めた。
ナユタは驚異的な胃腸の持ち主で、なんでも食べる。
どういう仕組みなのか分からないが、なんでも食べる。
「いや、トラコ、そうじゃないんだ。俺が食いたいのは草じゃないんだ」
「ドラゴだ! ドラゴだと言ったらドラゴだ! いいから草食ってろ」
「あ、闇蛙 ! 闇蛙がいるぞ。闇蛙は食えるかな」
ドラゴが食えんだろと言う間もなく、ナユタは闇蛙を捕まえる。
もの凄い早業だ。
その瞬間――。
ナユタの両手は闇蛙を握りつぶしてしまった。
「あーあーあーあー、また握りつぶしちゃったよ。ナユタの旦那、加減てものを覚えなよ。魔物 とはいえ握りつぶすなよ。加減しろって」
「その加減てのが難しいんだ」
「いやいや、もう何回魔物 握りつぶしてるのさ」
通常は魔物 を握りつぶせたりはしない。
ナユタ・エルリカ・アルが怪力なのである。
握りつぶされた闇蛙は赤い魔石に変化していた。魔物は討伐されると赤い魔石に変化する。
まあ、そのまま放っておくとまた元の闇蛙に戻るのであるが。
「闇蛙は食えないだろ。ていうか殺した瞬間に魔石になるんだからどう考えても食えんだろ。アホなのか?」
ナユタはそうか、そうだなと言って、残念そうな顔をした。
「仕方ない。働くか……」
「ああ、それが賢明な判断というものだろう」
「働くの嫌いなのだが……」
ナユタが何をして稼ぐかといったら『冒険者』の仕事である。
『冒険者』の仕事をするなら冒険者ギルドへ行かねばならない。
ナユタは観光案内所でもらった観光マップを広げた。
「ええと、冒険者ギルド、冒険者ギルド。無い。無いぞ!」
「観光マップに『冒険者ギルド』なんか載ってないんじゃねえか?」
「じゃあ、どうすればいいのだ?」
もう、どうでもいいよとナユタは言って、彼は草むらで寝てしまった。
ふて寝かよと言いながらも、ドラゴもまたナユタに寄り添って昼寝をすることにしたのであった。
ナユタ・エルリカ・アルは16歳であった。
彼は旅をしていた。一人でではない。相棒がいた。
相棒の名はドラゴである。トラ柄の猫の姿をしている。魔導書の精だ。
「なあトラコ、腹減ったなあ」
「オレの名はドラゴだ! 何回言えばわかるんだ?」
「ああ、ドラゴねドラゴ。それより腹減ったよ」
古い魔導書には『魔導書の精』と呼ばれるものが宿ることがあるという。
ナユタは彼の家、アル家に伝わる魔導書を持っている。
その魔導書に宿っていたのがドラゴであり、ドラゴはアル家の当主に代々仕える魔導書の精である。
念のためもう一回書いておくが、ドラゴの姿はトラ柄の猫である。ちなみにオスである。
「腹が減った? 知らんわ。魔導書の精は腹を空かしたりしないからな」
「盗むか? 食い物盗むしかないな! そうだ盗もう」
「ナユタの旦那よう、盗みはよくないだろ」
魔導書の精・ドラゴはあきれた顔をしてみせた。
まったくもって仕方のない奴だと言いたげである。
「じゃあ、どうしろって言うんだ」
「その辺の雑草でも食ってろ」
「そうだな。そうするよ」
そう言ってナユタは草むらへ行き名も知れぬ草を食べ始めた。
ナユタは驚異的な胃腸の持ち主で、なんでも食べる。
どういう仕組みなのか分からないが、なんでも食べる。
「いや、トラコ、そうじゃないんだ。俺が食いたいのは草じゃないんだ」
「ドラゴだ! ドラゴだと言ったらドラゴだ! いいから草食ってろ」
「あ、
ドラゴが食えんだろと言う間もなく、ナユタは闇蛙を捕まえる。
もの凄い早業だ。
その瞬間――。
ナユタの両手は闇蛙を握りつぶしてしまった。
「あーあーあーあー、また握りつぶしちゃったよ。ナユタの旦那、加減てものを覚えなよ。
「その加減てのが難しいんだ」
「いやいや、もう何回
通常は
ナユタ・エルリカ・アルが怪力なのである。
握りつぶされた闇蛙は赤い魔石に変化していた。魔物は討伐されると赤い魔石に変化する。
まあ、そのまま放っておくとまた元の闇蛙に戻るのであるが。
「闇蛙は食えないだろ。ていうか殺した瞬間に魔石になるんだからどう考えても食えんだろ。アホなのか?」
ナユタはそうか、そうだなと言って、残念そうな顔をした。
「仕方ない。働くか……」
「ああ、それが賢明な判断というものだろう」
「働くの嫌いなのだが……」
ナユタが何をして稼ぐかといったら『冒険者』の仕事である。
『冒険者』の仕事をするなら冒険者ギルドへ行かねばならない。
ナユタは観光案内所でもらった観光マップを広げた。
「ええと、冒険者ギルド、冒険者ギルド。無い。無いぞ!」
「観光マップに『冒険者ギルド』なんか載ってないんじゃねえか?」
「じゃあ、どうすればいいのだ?」
もう、どうでもいいよとナユタは言って、彼は草むらで寝てしまった。
ふて寝かよと言いながらも、ドラゴもまたナユタに寄り添って昼寝をすることにしたのであった。