第42話 驚くべき場所に「答え」 ~ギター速弾きの秘訣~

文字数 1,400文字

驚愕な場所に「答え」が見つかる。
自分が解決すべき問題の「答え」が、意外なところに転がっているのである。
一見「答え」に見えぬことが、じつはそれが物凄く重要な問題解決の鍵だったりする。
あの時も、まさにそうだった。

ギター奏法に『速弾き』なるものがある。
文字通り、もの凄い速さでギターを弾く。
特にヘビーメタルのギターソロでは、この速弾きが重要となる。
じつは、この速弾き……

――とても難しい

左指を1秒間に6回以上動かす、なんてこともざらである。
メタル好きの私も、なんとか速弾きを習得したい。

ところが、これが本当に難しく、なかなか習得できない。
何か必ず速く弾く為の「秘訣」があるはず。
それが一向に見当たらない。

「一体、どうしたら速弾きが出来るのだろうか……」

どうにも超えられぬ壁に困り果てていた。
ところが、これが思わぬことで解決した。

とある番組でのこと。
中国の横笛に魅了された日本の学生が紹介されていた。
その学生が実際の横笛の演奏を中国へ見に行くというものだった。

本場、中国の横笛の演奏は、見事であった。

まだ4歳くらいと思われる小さな子が見事な横笛の演奏を披露する。
「速吹き」とでも言おうか、驚くほどの速さで指を動かし吹いていた。

日本の学生はとても感激していた。

次は日本の学生が横笛を吹く番である。
その小さな師匠の前で、横笛を吹いて聴いてもらった。
すると、小さな師匠はこう言った。

「そんなに指に力を入れてはダメだよ。それでは速い演奏に対応できないよ」

私はそれを、へええ、と聞いていた。
まったく「他人事」のように……

ところが、途中から、ふと気づいた。

「え?待てよ……これって……」

指を速く動かすことは、ギターも笛も同じではなかろうか。
だとしたら、ギターも指に力を入れてはダメと言うことになる。

――え?そうなの?……

その言葉が、なんだか自分に言われているような気がしてきた。

そうである。
私もギターの速弾きをする時に、左指に思いっきり力が入ってしまっている。

ひょっとして、これが速く弾けない原因か?

早速、ギターを持ち出し、指の力を極力抜いて弾いてみた。

――おや?

いつもより少しスムーズに指が動く。
なんとなく、速く弾けたような気がした。

その後、小さな師匠のこの教えを、忠実に実践し続けてみたところ……
なんと!

――各段と速く弾けるようになった!

小さな師匠は正しかった。
左指に関しては、力を抜けば抜くほど、速く弾けることが判った。

「こ、これが秘訣だったのか!」

これには本当に助けられた。
この小さな師匠の言葉のお陰で、長年、ぶつかっていた壁を打ち破ることが出来た。

正直、お礼を伝えたいくらいである。

勿論、ギターの速弾きにはその他の秘訣も必要。
しかし、小さな師匠の教えてくれた秘訣は最大の秘訣と言える。

なんとも、私に速弾きの秘訣を教えてくれたのは、たまたま目にした中国の4歳くらいの小さな師匠だったのである。

長年抱えていた問題の「答え」が、思いもよらないところに見つかった。

最初、小さな師匠の言葉を「他人事」のように聞いていた。
もしそのまま他人事にしていたら、この問題は解決されなかったことだろう。

周囲で起きていることを自分のことに置き替えることで、思わぬところに「答え」は見つかるのかも知れない……
ふと、そんなことが思い浮かんだ。

それにしても……

――異国の4歳の子に秘訣を教わるとは……

まさに「事実は小説よりも奇なり」である。


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